成長途中の子どもの顎骨を矯正する”顎顔面矯正法”とは | 歯と健康のラボラトリー

続きを読む

" />

歯と健康のラボラトリー

成長途中の子どもの顎骨を矯正する”顎顔面矯正法”とは

現代は子どもの軟食化が進んでおり、どんどん顎の骨が小さくなっていると言われています。上顎の成長が不十分な状態では、歯が顎に収まりきらず、並びが悪くなってしまいます。

永久歯が健全に生えるところがない、永久歯の生える位置がおかしい、永久歯の前歯が重なってしまっているなど、歯並びが悪いと噛む力が弱いため、食べ物を効率良く消化して栄養を吸収しにくくなってしまいます。

また、「いびきがひどい」「よく噛まずに食べる」「しゃべりづらい」「飲み込めない」「いつも口が開いている」などは、歯並びやかみあわせが悪いと起こりやすい症状です。これらの症状は鼻で呼吸ができずに口で呼吸していることが多く、上顎の発育不良が関係しています。

歯を支えている顎の発育が原因で起きているこのような症状は呼吸、睡眠、姿勢、消化、顔のバランス全身の正しい成長も妨げてしまうことがあります。お子様の顎の順調な発育、成長を促すことで、それらの機能も改善していきます。

その矯正が”顎顔面矯正”です。

顎顔面矯正は発育を正常にし、機能を改善する治療なので早い年齢(5歳~7歳くらい)に開始するのが理想的です。

小さな頃から矯正治療を行うことは、親御さんの管理が必要だったり成長を見ながら行うので時間がかかるという欠点もありますが、多くの利点があります。

今回はお子さまの口元の状態が心配な親御さんに知って頂きたい顎顔面矯正についてお伝え致します。すでにお子さまの口元の状態に不安を感じているという親御さんは、この記事を参考にし、なるべく早めに歯科医院に相談するといいでしょう。

Contents

歯並びを決める要素

  1. 歯の大きさ
  2. 顎の大きさ
  3. 歯の生える位置

この3点が歯並びを決める重要な要素です。さらにこれらは、生まれ持ったものと生活習慣によるものによって、決定されていきます。

生まれ持ったもの(遺伝によるもの)

子どもの顔かたちが親に似るのと同じように、歯の大きさや顎の関係(大きさや受け口など)が親から子どもへ受け継がれる可能性がわかっています。

後天的な要因(環境によるもの)

大きくなっても指しゃぶりをやめなかったり、舌を出してしまうなどの癖が原因となり歯を外へ 押し出してしまったり、虫歯などで歯を抜いたままにしたことが原因で歯並びを悪くすることもあります。

また、最近では食生活の変化によって、顎の骨の発育が悪くなっていることが原因で歯並びを悪くしていると言われているのです。

このように遺伝に加えて環境によって顎の成長や歯並びが左右されてしまいます。

現代は顔や顎の骨格の発達が不十分なお子さまが多く、何もしなければそのままになってしまいます。しかし成長途中のお子さまは成長が完了している大人とは全く異なる方法で治療することができ、骨格そのものから綺麗に治療することができるのです。

骨から治療する顎顔面矯正法とは

顎顔面矯正法とは、成長途上にあるお子さまの顎骨を広げることによって、本来あるべき成長を導いていく治療方法です。

一般的に知られている歯列矯正が、歯一本一本に対して行う治療方法であるのに対し、顎顔面矯正の場合は歯が並ぶ器となる顎の骨の大きさを広げ、根本的な解決を目的とした治療方法なのです。

現代のお子さまは、母体の栄養状態が良くなっていることで歯が大きくなっているのですが、食生活の多様化と軟らかい食事が増えていることによって咀嚼回数が以前に比べて激減し、顎が非常に小さく華奢になっています。

そのため歯の大きさと顎の骨状態がアンバランスな状態となっており、不正咬合(悪い歯並びや悪い噛み合わせ)のお子さまが増加しています。

まだまだ身体も精神的にも発育途中にあるお子さまの成長は目まぐるしく、顎の発育が期待できる期間は非常に限られた一時期です。そのため顎の骨そのものの発育の遅れを取り戻して本来の正常な機能と発達を促進するためには、いかに適切な時期にお子さまを歯科医院で診てもらうかということが需要なポイントとなるのです。

顎顔面矯正の適切な治療時期

そもそも上顎と下顎では発育のピークとなる時期が全く違います。

身長が伸びるのとともに比較的ゆっくりと成長するのが下顎で、5歳頃にピークとなり10~12歳ころにはほぼ成長が完了するのが上顎です。

上顎の成長は脳や脊椎などの神経系の機能が発達するのに応じて、早い時期に成長が終了します。

そのため顎顔面矯正を早期に行う場合には、なるべく早いうちの低年齢から行うことが望ましく、遅くとも10歳頃(5~8歳)までには治療を開始するのが適切な治療時期となります。

特に下顎が突出している下顎前突(受け口)の場合は、そのまま放置してしまうと悪化してしまうケースが多く、早めに治療を開始し、アンバランスな成長を最小限に抑えることが求められます。

なるべく早めに顎顔面矯正治療を行うことで、正常な骨と歯の発育を取り戻すことができるのです。

顎顔面矯正の効果

顎の成長を促進し美しい歯並びにする

顎顔面矯正とは「急速拡大装置」という特殊な装置を使用し、歯だけでなく顎全体を理想的な大きさに矯正することができます。

顎の骨が広がれば、永久歯は本来の正しい位置へ並ぶためおのずと綺麗な歯並びに仕上がります。特に、永久歯への生え換わりの時期にある年齢のお子さまには顎顔面治療は非常に効果的な治療法なのです。

歯を抜かずに並べることができるのも大きな特徴です。

上下の顎の位置関係を良好にする

顎顔面矯正治療は歯並びだけではなく噛み合わせも考慮した治療法ですので、出っ歯や受け口などを改善することができます。

美しい歯並びにするだけでなく、正しい顎の発達が促進されるため、上下のあごの位置関係を正常に戻します。

成長期のお子さまの噛み合わせの悪さは、上顎の発育を抑制してしまいます。成人期になると顎の成長は完了してますので、歯を抜き、ワイヤーで歯を並べる、という一般的な矯正治療か、場合によっては外科手術を伴うこともあります。

成長期にある小さなお子さまの場合は顎顔面矯正によって、そのリスクを最小限に抑えることが可能なのです。

鼻づまりやいびきの軽減

顎顔面矯正治療では、歯並びを整えるだけでなく、鼻症状の改善も期待できます。

上顎の骨を広げることができれば狭まっていた鼻腔や気道も広がり、鼻づまりだけでなくいびきの軽減も期待できます。

顎顔面矯正治療の目的は歯並びの改善だけが目的なのではなく、あご全体のバランスを改善することで、生体の正常な機能や発育を目的としています。

まとめ

歯が並ぶ顎骨や周囲の軟組織までを考慮した顎顔面矯正治療なら、お子さまたちの身体を本来あるべき正しい発育へと導くことができます。

小さなお子さまは、これからどのように成長するかまだまだ分かりません。成長する過程心配なことがあっても、なるべく早く解決することで、その後に起こり得るリスクを回避することができます。

これはお子様にとっても、ご家族にとってもうれしいことではないでしょうか。

バランスよく発育し自然に整った口元、健康的な笑顔を守り明るい未来を切り開くためにも、お子さまの口元の状態をしっかりと把握しておきましょう。

 関連記事

ライフステージを通してお口の健康を守る 歯科衛生士の仕事

歯科医院で、皆様が一番接することの多いのが歯科衛生士ではないでしょうか? 歯科医師の補助やクリーニングする人って思っていませんか? 患者さんにとって、歯科医師よ

元気な子どもは元気なママから 〜心もからだも健康に!〜

元気な赤ちゃん、おとなしい赤ちゃん、夜泣きする赤ちゃん、機嫌が良く、よく寝て手がかからない赤ちゃん、よく笑い愛嬌のある赤ちゃん、男の子だから、女の子だから、個性

歯が生えてなくても大切!赤ちゃんのお口の働きを知ろう

まだ歯が生えてないから、歯医者さんは関係ない!と思っていませか? 確かに虫歯はないのですが、赤ちゃんには赤ちゃんのお口の働きがあるのです。 決してただ小さいだけ

歯と健康の栄養学 タンパク質2 ”お口と歯の栄養”

前回は元気で健康な生活には欠かせない”命の源”タンパク質についてお話をしました。 今回はそのタンパク質が歯科ではどういう役割を果たしているのか、”お口と歯の健康

気になる不正咬合!オープンバイトを治すには?

奥歯しか噛んでおらず、前歯が噛み合わない状態のことをオープンバイト(開咬)といいます。オープンバイトでは常に前歯が開いている状態なので、前歯で食べ物が噛めない、