
顎関節症の場合には、一つの原因ではなくさまざまな原因があります。そのため、誰にでも共通している一つの原因を考えるのではなく、患者さんごとにそれぞれの原因を考えて治療が行われています。
ここでは歯科医院で行っている顎関節症の治療方法をご紹介したいと思います。顎関節症は安静にしていれば治癒するものもありますが、中には専門的な治療や指導が必要となるものもあるため、顎関節症の治療を受けようと検討している方は是非参考にして下さい。
Contents
顎関節症の治療を受ける前のセルフチェック
食事をするときや会話をするときなど、口の開閉と連動して動いている顎。この顎の関節が何らかの原因で痛みを感じるようになったり、動かしにくくなってしまうのが顎関節症です。
軽度の症状から重度の症状まで個人差が大きくありますが、まずはご自身が顎関節症かどうかをセルフチェックしてみましょう。
- 口を開けたり閉めたりすると痛みがある
- あごを動かすときに異常な音がする
- 口を大きく開けることができない、閉じない
- 咬み合わせが変わってきた
- こまかみや頬のあたりが何をしていなくても痛い
上記に当てはまる項目が多い場合には顎関節症の疑いがあります。
顎関節症の軽度のものであれば自然に治癒することもありますが、重度の場合には歯科医院で早めに治療を開始することをおすすめします。
顎関節症の治療方法
顎関節症を引き起こす原因が一つではない以上、顎関節症の症状を訴えている患者さん全員に同じ治療を行うわけにはいきません。顎関節症の症状や原因に応じて最適な治療方法を精査して治療を行っています。
ここでは顎関節症の代表的な治療方法をご紹介したいと思います。
スプリント療法
顎関節症の一般的な治療方法として挙げられるのがスプリントによる治療で、プラスチック製のマウスピースのようなものを使用します。
上顎もしくは下顎の歯列にマウスピースを装着し、無意識に起こる歯ぎしりや強く咬み合わせてしまうことを防ぎ、顎関節や筋肉の負担を軽減させます。
無意識に行っている食いしばりや歯ぎしりによって食事の際の2倍もの負担が顎や歯にかかると言われています。マウスピースを装着することによって顎を安定する位置に固定することができる上に、顎や筋肉にかかる負担軽減することができるため、顎関節症の治療で最も多く行われています。
患者さんの顎関節症の症状や改善目的に合わせたマウスピースを作成し、使用するタイミングは歯科医師の診断によりますので、指示に従いましょう。
運動療法
運動療法が顎関節症になぜ効果的なのかと言うと、顎関節は動かしていくことによって機能が維持され、咀嚼筋を伸展することによって血行が改善されます。その結果として筋肉の拘縮を防ぎ、機能の回復が期待できるのです。
運動療法を実践する際には、症状によっては多少の関節の雑音や痛みが増すこともありますが、徐々に顎関節症の症状が緩和していきます。
自宅でのケアも重要ですが、歯科医師の指示通りに通院し、症状の変化などを確認しつつ治療を行っていきます。
TCH是正訓練
TCHとは「Tooth Contacting Habit」の略で、「日中の歯の接触癖」のことを指します。TCHが原因で顎関節症を発症している場合には、習慣的に歯を接触させてしまう癖をなくす、改善することが必要になります。
上下の歯が触れ合うタイミングは咬みしめたときや歯ぎしりをした時だけだと思いがちですが、実は強い力で咬みしめなくても、上下の歯が触れ合う程度でも筋肉が緊張していたり、疲労してしまうのです。
通常は上下の歯が接触している時間は1日あたり20分にも満たないと言われています。口を閉じていたとしても、上下の歯の間には隙間があるものです。
上下の歯が接触すると軽い接触だとしても咀嚼筋が活動します。接触時間が長くなればなるほど顎関節への負担が増え、知らないうちに顎関節症を発症してしまうことがあるのです。
就寝時などの無意識な咬みしめや歯ぎしりによって、起床時に顎の疲労感があったり口を開きにくいと感じることがあり、TCHはさまざまな身体の不調に繋がる可能性があるのです。
TCHの是正訓練を行うことによって顎関節症の痛みを改善することができるため、治療に取り入れることがあります。
パンピング療法
パンピング療法とは、顎関節を包んでいる関節包という袋状の部分(関節腔)に局所麻酔を注入し、炎症性の物質を洗い流すだけでなく関節を押し広げることによって動かなくなった関節円板を動かすようにする治療方法です。
パンピング療法をすればそれで完了というわけではなく、運動療法やスプリント療法を取り入れる必要があります。パンピング療法には運動療法を補助する効果があるため、併用されることが多いのです。
洗浄療法(上関節腔洗浄療法)
顎の動きを滑らかにするための潤滑剤のような働きをしている関節液は、顎関節を包んでいる関節包(関節腔)という部位に存在しています。
関節包(関節腔)の内部にある関節液は、新しい関節液が出されることで古い関節液が自然と吸収され、循環される仕組みになっています。このように循環されることによって常に綺麗な潤滑液があるのが望ましいのですが、何らかの原因によって古い関節液が老廃物として停滞し、顎関節症を引き起こしてしまうケースがあります。
洗浄療法とは、関節包(関節腔)に生理食塩水を入れたり出したりを繰り返し行うことにより、古い関節液を洗浄するという方法です。
生理食塩水を出し入れするのは注射針を用いて行うため、手術とはことなりリスクも最小限に抑えることができます。
上記治療方法を行ってもどうしても痛みがコントロールできないという場合には、関節鏡手術や関節を開いて切除する手術を行うことがありますが、このようなケースは顎関節症患者さん全体の1%くらいしかいらっしゃいません。
まとめ
近年では、日常生活を送る上でさまざまな因子が顎関節症の症状の出現に関係していることがわかっています。
今回ご紹介したように歯科医院に通って顎関節症を治療する方法もありますが、それ以上に重要なのは患者さんがご自宅で自ら行う家庭療法や日常生活で十分に注意することです。
患者さまそれぞれに違う原因があり、症状の現れ方もさまざまですので患者さんご自身でもケアを十分に行うように心がけましょう。