口腔の健康とタバコ 新型タバコって本当に安全?! | 歯と健康のラボラトリー

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口腔の健康とタバコ 新型タバコって本当に安全?!

 

タバコが体に悪いことは皆さんよくご存知だと思いますが、お口の健康にも影響することを知っていますか?

口腔は喫煙によって、直接そして最初に主流煙にさらされる場所です。影響を受けないわけがありません!

口腔の主な疾患であるむし歯や歯周病、がんとの因果関係も報告されています。

タバコには4000種類以上の化学物質が含まれており、そのうち200種類以上の有害物質50種類以上の発がん物質が含まれています。

タバコの煙にはタバコを吸う本人が直接吸い込む「主流煙」と喫煙者の吐き出す煙、火のついた部分から立ち上がる煙の「副流煙」があり、「副流煙」の方がタールや一酸化炭素など有害物質が多いと言われています。そしてこの「副流煙」を自分の意思とは関わらず吸い込んでしまうことを「受動喫煙」と言います。

喫煙によって口腔の老化を10年以上早めると言われています。

吸っている自分だけじゃない、タバコと口腔の健康についてお話ししたいと思います。そして今、日本で人気のある新型タバコ(加熱式タバコ、電子タバコなど)についても少し触れたいと思います。

 

Contents

タバコと因果関係のある口腔疾患

 厚生労働省の2016年の報告によると、喫煙者本人の口腔疾患との因果関係は、

 科学的根拠は十分であるというレベル1に口腔がん・喉頭がん、歯周病

科学的根拠は示唆的いうレベル2にう蝕(むし歯)、インプラントの失敗、歯の喪失

が挙げられています。

それではそれぞれについて少し詳しく見てみましょう!

口腔がん・咽頭がんと喫煙

非喫煙者に比べて、喫煙者は口腔がんの発生率は約3倍咽頭がんでは32.5倍!!になります。

喫煙歴の分類では、圧倒的に口底部、ついで硬口蓋部のがんに喫煙率が高くなっています。

これは、口底部ではニコチンが唾液と混ざり合って貯留するからと考えられており、硬口蓋は吸い込んだニコチンが直接暴露する部位だからと言われています。

口腔粘膜は薬物を非常に早く吸収しやすいため(狭心症のニトログリセリン舌下錠のように)、有害物資が入り込みやすく白板症のような前癌病変の発症にも影響していると思われます。

歯周病と喫煙

喫煙によって歯周病になりやすくなることは知られていますが、歯周病の治癒も悪くなります。また、喫煙本数と歯周病の重症化率にも用量依存的な関係があります。

ではなぜ喫煙すると歯周病のリスクが上がるのでしょか?

タバコに含まれるニコチンは神経毒で歯周組織の血管を収縮させて流れを悪くし、酸素や栄養が十分に行き渡らなくなります。そのため歯肉の抵抗力や免疫機能が弱くなります。

また傷の修復をする細胞(線維芽細胞)の働きも抑制してしまうため、治癒も悪くなってしまうのです。

1日10本以上の喫煙で、歯周病のリスクは5.4倍になると言われており、受動喫煙でもリスクは3倍になります。

その他の口腔への影響

歯周病やがん以外にも様々な影響があります。

喫煙によって唾液の分泌も抑制されます。唾液は消化、免疫、抗菌、粘膜の保護、歯の再石灰化、洗浄作用など重要な機能がたくさんあります。それ全てが十分に発揮できなくなりますので、むし歯、歯周病、口内炎などにもなりやすくなります。もちろん口臭の原因にもなります。

タバコに含まれるタールの付着し、ニコチンによって毛細血管が収縮するため粘膜の色が暗紫色になります。メラニン色素も沈着しやすくなるため、歯肉や唇が黒ずんできます

また、歯の喪失味覚にも影響しますので、食事にも影響が出ます。

インプラント治療に関しても影響があります。術後の治癒が悪くなることもそうですが、非喫煙者に比べてインプラント周囲に病原性の細菌が多く集まりやすくインプラント周囲炎を起こしやすい環境になっていると言われています。

喫煙者のインプラント失敗には手術部の術後感染とインプラント周囲の骨の喪失が影響していると報告されています。

高齢者への影響

喫煙による歯肉の退縮、歯根がより露出しやすくなります。また、唾液も少なくなりますので、汚れが流れにくく、たまりやすくなってしまいます。

歯根の表面はエナメル質というバリアがありませんので、簡単にむし歯になってしまいます。(根面う蝕)

小児への影響

タバコに含まれるニコチンはむし歯の原因菌の代謝活性を促進し、また歯垢形成の増加にも関与しているそうです。

歯の形成期の受動喫煙によって煙に含まれるカドミウムが歯の硬組織の結晶化を妨げ、歯が生えてからの受動喫煙がむし歯の原因菌を歯の表面に定着させるのを促進させるという研究もあります。

喫煙習慣がある親を持つ子供のなんと79%が歯肉が黒くなっているという報告もあります。

新型タバコは安全?!

煙が出ない、においが少ない、ニコチンを含まない、ということで新型タバコ(加熱式、電子など)が急速に普及してきています。

加熱式タバコは葉タバコを直接加熱してニコチンを含むエアゾルを吸引する仕組みになってます。主流煙に含まれる有害物質の量は、ニコチンで紙巻きタバコの約84%、発がん物質であるホルムアルデヒドは約74%と報告されています。このエアゾルは当然空気中にも放出されており、においが少ないため、かえって気づかないままに受動喫煙してしまっていることもあります。

電子タバコはタバコの葉を使用せず、原則としてニコチンを含まない特徴があります。タバコ燃焼の副産物であるタールや一酸化炭素も含まれないので受動喫煙の心配もないとされてきました。しかし、最近の研究では紙巻きタバコの主流煙の10倍のホルムアルデヒド濃度に達したとの報告や電子タバコ特有の有害化合物(グリオキサール、メチルグリオキサールなど)も確認されています。

まとめ

お口の中への様々な喫煙の影響をお話ししてきましたがいかがだったでしょうか?

もちろんお口の中だけでなく、全身への様々な影響があります。喫煙しているご本人だけでなく、お子様の口腔内にも影響してしまいます。

美味しく食事取れて、栄養が十分取れることは、健康な生活には欠かせません。

禁煙後、10〜20年で歯の喪失レベルが非喫煙者レベルまでに改善されることも研究されていますので、早めの禁煙が良さそうです。

嗜好品としてのタバコも場所や量を考えていくことが大切ですね。

 

 

 

 

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