歯と健康の栄養学 タンパク質2 ”お口と歯の栄養” | 歯と健康のラボラトリー

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歯と健康の栄養学 タンパク質2 ”お口と歯の栄養”

前回は元気で健康な生活には欠かせない”命の源”タンパク質についてお話をしました。

今回はそのタンパク質が歯科ではどういう役割を果たしているのか、”お口と歯の健康”とタンパク質の関わりについてお話していきたいと思います。

お口の健康が全身の健康に大きく関わっていることはご存じの方も多いと思います。

お子様からご高齢者の方まで口腔の機能はとても重要です。そこにもタンパク質の大切な役割があるのです。

Contents

歯と歯周組織とタンパク質

歯と歯周組織の基である歯胚の材料となるのはタンパク質です。

乳歯の歯胚の形成は胎生6週頃から始まり、永久歯の歯胚形成も胎生3ヶ月頃に始まります。

その後数年かけて歯槽骨の中で発育し、口腔内に生えてきます。

萌出した歯の象牙質の約20%(重量比)がタンパク質であり、その大部分を占めるのが、構造タンパクであるコラーゲンです。

歯肉の上皮下結合組織の約60%はコラーゲンでできています。

コラーゲンの合成にはタンパク質、鉄、ビタミンCが必要です。

タンパク質が不足すると、コラーゲンの合成が阻害されるため、歯肉にハリがなく、ブヨブヨしたり、出血しやすくなったりします。また歯周病の治療にも反応が悪く、治癒が遅くなります。

歯根と歯槽骨の間の薄い膜で、歯と歯槽骨をつなぎ、歯に伝わる力を調節したり触覚や痛覚のセンサーでもある歯根膜の線維成分のほとんどがコラーゲンでできています。

矯正で歯を動かすことができたり、歯の移植や再植ができるのもこの歯根膜があるからです。

歯根膜とともに歯を支えている歯槽骨の有機成分(全体の1/3)の約80%以上がコラーゲンです。

骨の質にタンパク質は大きく関わっており、歯周病、骨折や骨粗鬆症においても骨の強度の約30%は骨質が関係しているため、タンパク質の摂取が重要になります。

口腔粘膜とタンパク質

歯肉同様、歯肉以外の口腔粘膜にもタンパク質は重要です。

口内炎、口角炎、口唇炎、舌炎など粘膜の炎症は口腔粘膜の脆弱が影響しており、タンパク質が不足すると起こりやすくなります。また、その治癒に関わる細胞の分化や粘膜の再生にもタンパク質は欠かせません。

入れ歯が合わないと、入れ歯の当たる粘膜に傷がつき炎症を起こしますが、この時もタンパク不足によって粘膜が弱くなっていると、より症状がひどくなったり、治りが悪くなったりします。

また、タンパク質不足で粘膜に浮腫が起きると、頬や舌に歯の圧痕がつきやすくなります。

義歯が合わなかったり、歯がなかったり、かみ合わせが悪くて、良く噛めないと、タンパク質の咀嚼不良から、きちんと消化、吸収できず、タンパク質不足になることがあります。

歯を治して、口腔機能を回復し、しっかり咀嚼することで、歯周組織が健康になり、歯周組織が健康になれば、さらに栄養が取れるようになるので、全身の健康につながります。

歯周組織の代謝

お口の中を噛んだりして傷つけても、すぐ治るという経験はありませんか?

そう、歯周組織のコラーゲン代謝はとても早いのです。

歯槽骨で6日

歯肉で5日

歯根膜はたったの1日ととても活発な代謝が行われています。

つまり、治癒能力が非常に高いのです。しかし逆に考えれば、栄養の影響を受けやすい組織なのです。栄養不足になるとすぐにその影響があらわれ、治癒が悪くなります。

唾液とタンパク質

口腔粘膜は皮膚と違い、唾液が表面を覆っています。

この唾液には多機能の唾液タンパクがあり、

物理的(潤滑・保護)、化学的(緩衝・消化・抗菌)、免疫的(病原体を排除)バリアを担っています。

唾液タンパクの機能

緩 衝    : 炭酸脱水素酵素、ヒスタチン

消 化    : アミラーゼ、ムチン、リパーゼ

歯石形成阻害 : シスタチン、ヒステチン、PRP、スタテリン

潤滑・粘稠  : ムチン、スタテリン

組織の保護  : アミラーゼ、シスタチン、ムチン、PRP、スタテリン

抗真菌    : ヒスタチン

抗ウィルス  : シスタチン、ムチン

抗 菌    : アミラーゼ、シスタチン、ヒスタチン、ムチン、ペルオキシダーゼ、

リゾチーム、ラクトフェリン、

免 疫    : IgA(免疫グロブリンA)

 

このような様々な機能を持っている唾液の分泌が減少し、ドライマウスになってしまうと、これらの機能が発揮できなくなり、虫歯、歯周病、口内炎、感染などが起こりやすくなり、口腔内環境が一気に悪くなってしまいます。

ここにも十分なタンパク質が必要なのです。

 

まとめ

口腔におけるタンパク質の重要性がわかっていただけたでしょうか?

もちろんタンパク質だけが重要なのではなく、タンパク質が働くためには他の栄養素の助けが必要です、そしてそのタンパク質がきちんと消化され、吸収されてはじめて栄養として働きます。

消化は口腔で咀嚼をし、分解するところから始まります。

お母さんのお腹の中から歯や歯周組織の形成は始まり、齢を重ねても健康であるためには、丈夫な歯と歯周組織が必要です。

口腔は健康の最前線にあるといえます。

タンパク質が取れる口腔と身体を整え、しっかりタンパク質を摂取して一生の健康を手にいれましょう!

 

 

 

 

 

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