みなさんは口の中に炎症や潰瘍などの異常が何も確認できないにも関わらず、痛みや異物感、乾燥、知覚過敏や麻痺したような感覚に陥ったことはありませんか?
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口腔(歯科)心身症とは
口腔(歯科)心身症とは近年普及しつつある考え方で、口の中の異常が心理社会的要因(心理的要因や環境的要因)に由来している病態です。「お口の不定愁訴」と言われる口腔内の渇きや違和感などのさまざまな症状を指します。治療を行う上で心身両面から対処をする必要があると考えられます。
治療をしたのに痛みが持続する、舌の痺れを感じるなど、口の中の違和感や不快感が続いている場合には口腔心身症の可能性があります。
そもそも心身症の定義が困難であるために、口腔(歯科)心身症は学会でも未だ厳密に規定されておらず、目に見える炎症や潰瘍などのトラブルがないことから、歯科で「何も問題はない」と言われ、精神科や診療内科でも「専門外だから治療のしようがない」と言われてしまい、解決することができずに悩んでいる患者さんが存在します。
注意すべき症状
- 舌がヒリヒリする、痺れている、火傷のような痛みがある
- 口内に何とも言えない違和感や異物感がある
- 唾液が少なく、口の中がネバネバして粉が出る
- 食べ物を口にしても味がしない、味を感じすぎる
- 原因不明の痛みがあり、時間が経っても軽くならない
- 痛みや違和感を自覚しているのに病院の検査で異常がないと言われた
上記のような症状に心当たりがある方は、早急に口腔心身症の治療を行っている医療機関を受診しましょう。
口腔(歯科)心身症の種類
舌痛症
口腔(歯科)心身症の中でも最も多いのが、舌の先端や舌の縁に感じる疼痛と、ピリピリ・ヒリヒリとして感じる舌痛症という症状です。「口の中のヒリヒリやカーッと熱い感覚や痛み、またはピリピリした不快な異常感覚が、1日に2時間以上で3ヶ月以上に渡り連日繰り返すもので、臨床的に明らかな原因疾患を認めない病態」と定義されています。痛みのために仕事が困難になったり、日常生活に支障がでたりすることもあります。
舌痛症は「口腔内灼熱症候群(バーニングマウス症候群)」と同じ病態で、灼熱感という火傷と似たような強い痛みを感じるケースもあります。舌の乾燥を訴えるケースも多く、この場合には口内乾燥感症と呼ばれることもあります。
舌痛症は唯一の症状が痛みであるため、舌や歯肉に炎症や潰瘍が見られる場合には舌痛症ではなく、舌炎やアフタ性口内炎、扁平苔癬などの口腔粘膜疾患などを発症している可能性があります。
舌痛症は、特に更年期の女性に発症することが多いことがわかっています。
口腔異常感症
口腔内に炎症やできものが無い異常な感覚を感じる口腔内異常感症も心因的な要因から起こる場合があります。口の中がネバネバ・ベタベタ・ザラザラする、口腔乾燥や味覚異常などの感覚異常が生じます。
食べ物を食べても美味しくない、本来の味を感じることができないという味覚の減退や、口の中がいつも苦い・酸っぱい・甘いなどの異常が現れることがあります。甘いはずのものを食べても苦いなど、味覚に異常が出るのはとても辛いことです。
男女差はあまりなく、高齢者に多い症状で、歯の治療後に発症したり悪化したりするケースもあります。
口腔(歯科)心身症の原因
口腔(歯科)心身症の明確な原因は明らかになっていませんが、心理的要因だけでなく、身体的要因が合わさって発症すると考えられています。
心理的要因にはストレスや恐怖、不安だけでなく、几帳面・完璧主義・悲観主義などの性格、強迫観念などが関係しています。また、身体的要因には唾液腺機能や血清鉄の低下や口腔内の細菌の変化などが関係しています。このほかにも糖尿病や薬の副作用にも関わりがあると言われています。
このほかにも神経伝達物質の枯渇や脳内の神経回路の機能不全などの関与が指摘されていますが、その関係性は今のところ明確にされていません。
口腔(歯科)心身症の治療方法
舌痛症や口腔異常感症は、口腔(歯科)心身症の代表的な疾患ですが、心理的要因も身体的要因も考慮しなければならないため、他の疾患の有無、生活習慣や生活背景を探ってから診断する必要があります。
口腔内だけの症状と決めつけるのではなく、精神科や心療内科を受診する必要があるケースがあることを考慮し、患者さんの状態に合わせて治療が行われます。
まとめ
口腔内に炎症や潰瘍などの異常が何もないのに、口の渇きや違和感などがあるととても不安ですよね。
歯科検診で異常がないと言われたばかりなのに痛みが続いたり、何か違和感を感じたりする場合には一人で抱え込まず、信頼できる歯科医院に早めに相談すると安心です。
口腔(歯科)心身症は身体的要因だけでなく、心理的要因が大きく関係していることから、患者さんの価値観や性格なども関わっている可能性があります。根本的に原因を取り除くためには、担当医師と協力して症状を軽減する努力が必要不可欠となりますので、辛い症状を肯定してくれてしっかりと向き合ってくれる医師を探しましょう。