高齢者がいつまでも健康にイキイキと暮らしていくためには、心身の衰えをしっかりと予防していくことが非常に大切です。
正しいお口のケアを実践することによって”口の中の健康”を維持することができれば、自分の歯で食べ物をしっかりと噛むことができ、充実した食生活を送ることができます。良く噛むことで脳の血流が増え、脳神経細胞の働きも活発になりますので、認知症予防やさまざまな病気の予防に繋がるなど、高齢者の方にとって良い影響が沢山あります。
高齢者が生涯、楽しく・美味しく・安全に食生活を送るための口腔ケアは、介護を予防するための大きな一歩となるのです。
口腔ケアが日課になれば、移動や上体を起こすという動作が必要になりますので、お年寄りの気分転換や在宅リハビリに繋がり、心のケア効果も期待できます。高齢者を支えるご家族にとっても非常に嬉しいことですよね。
今回は高齢者の口腔ケアの重要性やケア方法をお伝え致しますので、是非参考になさってください。
Contents
高齢者の口腔環境の特徴
年齢を重ねるごとに口腔内の環境も日々変化します。
まずは高齢者の口腔環境の特徴を理解した上で、口腔ケアを徹底しましょう。
歯と歯周組織が変化する
歯と歯肉の境目がくさび形にすり減ったり歯肉が退縮してしまうため、露出した歯の根に虫歯ができやすくなります。
舌や口腔粘膜の状態が変化する
唾液の分泌量が減ることによって、舌や粘膜に変化が起こり、口臭の原因や味覚障害などを引き起こします。
歯肉の炎症が起こりやすくなる
歯肉が退縮したところに、歯垢、歯石が付着したり、入れ歯があたる刺激などで炎症が起こりやすくなります。
細菌が繁殖しやすい
口の中は適度な温度と湿度が保たれているため、歯や入れ歯に付着した食べかすや細菌を放置してしまうと、それが栄養になり細菌が増えてしまいます。酷い口臭が起きやすいのもこの為です。
入れ歯が合わなくなる
入れ歯は使用しているうちに歯の部分がすり減ったり、自分の歯や歯肉や骨の状態が変化することによって、合わなくなってきます。
入れ歯が合わない状態を放置してしまうと、食べ物を咀嚼しにくくなり、口の中を傷付けてしまいます。
高齢者の口腔ケアの重要性
体力が弱り、抵抗力が衰えている高齢者にとって、口の中の細菌は非常に強敵です。
口腔ケアは、全身の健康だけでなく精神面にも影響を及ぼすものです。できるだけ長い間健康な状態を維持してもらうためにも、快適な毎日を送るためにも、口腔ケアを習慣化することが大切です。そして毎日の口腔ケアだけでなく、定期的な歯科検診を受診することも習慣にできれば、さらに健やかな毎日を送ることができるのです。
口腔ケアとは、介護が必要な高齢者が増加し、高齢者化社会が加速したために生まれた言葉です。医療や福祉、保健の分野において浸透している言葉です。
口腔ケアには年代を問わず認識されている口腔内の清掃のためのケアに加え、年齢とともに衰える口腔機能について機能を訓練するケアの2つに分かれています。
唾液の分泌を促す
年齢と共に減ってしまった唾液の分泌を促すことで、口の中を清潔に保ち口腔感染症を予防します。また、唾液には消化を助ける働きもあります。
口腔機能低下の改善・予防
高齢者は老化や障害などの影響で口腔機能が低下しやすい状態にあります。
口腔機能が低下してしまうと、しっかりと噛んだり飲み込んだりすることができなくなり、栄養を十分に摂取することができない状態になります。その結果として免疫力の低下や体力の低下、認知症が悪化することで要介護度の進行などの悪影響が出ます。
食事を楽しみながら良く噛むことによる脳への刺激が、認知機能が低下するのを予防し、認知症の改善に役立つと言われています。
誤嚥性肺炎の予防
誤嚥性肺炎とは、食べ物が誤って気道に入ってしまったり、唾液を飲み込む際に口内の細菌が誤って肺に入ってしまうことで起こります。
高齢者は睡眠中などの無意識のうちに唾液を誤嚥してしまうことがあり、その際に口の中の細菌が気道に入り込んでしまったことが原因で誤嚥性肺炎を引き起こすことがあります。
高齢者の場合は誤嚥性肺炎が命取りになったり、寝たきりの原因になるため、口腔ケアをしっかりと行い予防することが重要です。
口腔乾燥症(ドライマウス)の予防
高齢者は噛む力が衰えることや、ストレスや薬剤の影響によって唾液の分泌量が減るため、口の中が乾燥する方が多くなります。
口や喉が渇いて食事が摂りにくいことや、発音しにくくなるなどの症状が出ます。万が一口の中が乾燥して痛むという場合にはほかの症状も考えられますので早めに医師に相談しましょう。
口腔ケアを適切に行うよってドライマウスを予防することができます。
口腔ケアを適切に行うポイント
それでは実際に高齢者の介護をしている方に注意して頂きたいポイントをお伝え致します。
短時間で終了する
自分で歯を磨いてきた経験から、他人に歯を磨いてもらうことに抵抗があるという高齢者が多いものです。無理に行うのは禁物ですので注意しましょう。
- なぜ口腔ケアが必要なのかをしっかりと話し、理解してもらう
- 口腔ケアが心地良いものだと感じてもらうようにサポートする
無理やり短時間で行うのではなく、必要性を理解してもらいリラックスした状態でケアするのが望ましいのです。時間を掛け過ぎず、短時間で終了するようにしましょう。
どうしても嫌がる方は歯科医師に相談し、定期的にクリーニングを行いましょう。
なるべく自力で行わせる
出来るだけ介助は最小限に抑えるようにし、サポートするという気持ちでいましょう。しかし最後の仕上げだけは介護者が行うのが理想です。
口腔内の状態をチェックする
毎日の口腔ケアを行う際には口の中をチェックし、口内炎やケガが無いかを確認することが大切です。
痛みがあって口腔ケアを嫌がっている可能性があるので、事前に確認する習慣を付けましょう。
まとめ
高齢になれば歯や歯肉のトラブルだけでなく、嚥下機能や唾液の分泌量の退化など口腔機能のトラブルが起こります。そして口腔ケアを適切に行わなければ、次第に噛む力が低下し、軟らかい物しか食べることができない状態になります。すると低栄養・運動機能・閉じこもりなどによって生きる気力が低下し、介護が必要な生活へとまっしぐらです。
しかししっかりと噛む力を維持することができれば、食物の栄養素の吸収率が良いだけでなく、脳が活性化し体力が高まります。身体に活気があふれ、精神的にも元気な状態でいることができれば、生活にも積極性がでたり表情が豊かになるなど良いことばかりです。
介護が必要にならないためにも、介護が必要でも要介護度が上がらないためにも、口腔ケアを徹底することが非常に重要なのです。