日本は超高齢社会へと移り変わりつつあり、80歳以上の高齢者の方の『フレイル=虚弱』について問題視されています。
「フレイル」とは加齢によって起こる体重減少や、気力や歩く速度の低下、握力の低下などのさまざまな影響によって身体の能力が低下し、心身ともに脆弱な状態になることを言います。
フレイルの一つである咀嚼力の低下や活舌が悪くなることによって言葉を明確に発音することができなくなってしまい、口の中の機能が低下してしまうことがやがて心身のフレイルに繋がることを『オーラルフレイル』と言います。
今回はみなさんの大切なご家族がオーラルフレイルによって健康を損ねてしまわないように、オーラルフレイルのリスクについてお伝えします。
ご家族にご高齢の方がいらっしゃる方も、ご自身の将来の健康を守りたいという方も、今回の記事をご参考にオーラルフレイルの前兆を見逃さないようにしましょう。
Contents
健康寿命を脅かすオーラルフレイル
一生のうち、健康で支障なく日常生活を送ることのできる期間のことを「健康寿命」と言います。歯の健康を維持することは、この健康寿命を伸ばすためにも重要なポイントです。
そして、歯の健康を保つためには、「オーラルフレイル」を予防することが重要です。
オーラルフレイルは、「歯科口腔機能の虚弱」「口腔機能低下症」「要介護性口腔症候群」等の総称です。 簡単に言い換えますと、食べ物を噛むことが出来ない状態や飲み込みが難しい状態になることです。
そこまでフレイルが進行してしまえば、健康な状態に戻る事がとても難しくなってしまうのです。もちろん歯科治療やリハビリをすることによって改善する事は出来ますが、そのまま進行すると介護が必要な状態になります。
- 歯周病などが原因で歯を失う
- 食べ物が偏る
- 咀嚼筋の衰え
- 噛むことが困難になる
- 飲み込むことが困難になる
- 介護が必要になる
このように、歯を失うことがきっかけとなり要介護状態になってしまうことが多くあります。
歯周病などが原因で歯を失ってしまうと、自然と硬いものを食べなくなり軟らかい食べ物ばかり好むようになってしまいます。すると結果的に食事の栄養バランスが崩れ、筋肉の衰えに繋がってしまいます。
筋肉が衰えることで、食べ物を咀嚼することや飲み込むことが困難になると、自力での食事が難しくなるので介護が必要な身体になってしまうのです。そうならない為にもなるべく早い段階から口腔内の状態をしっかりと観察し歯科医院で早期発見早期治療をすることは大切です。
ご家族にご高齢の方がいらっしゃる場合には特に、滑舌の衰えや食べこぼし、噛めない食べ物が増えたりむせたりするなどのささいな口腔機能の低下を軽視せず、見逃さないようにしましょう。
歯周病や虫歯の治療だけでなく、しっかりと噛んで食事を摂ることができるように噛み合わせの治療を受けることがとても大切なのです。
8020運動
8020運動は、平成元年より当時の厚生省と日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができると言われています。そのため、「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」との願いを込めてこの運動が始まりました。
2015年にはオーラルフレイルの予防の重要性について、日本歯科医師会が「しっかり噛んで、しっかり食べ、しっかり動く、そして社会参加を!」という理念のもと、従来の8020運動とともに国民へ周知する方針を示しました。
オーラルフレイルの前兆
多くの高齢者がオーラルフレイルに陥りやすいと言われていますが、高齢者自身がオーラルフレイルを自覚することはありません。オーラルフレイルをきっかけに身体的・精神的な病気を誘発する可能性があるためご家族やヘルパーの方々がオーラルフレイルの前兆に気が付くことが重要なのです。
まずはオーラルフレイルに気が付くためのさまざまな前兆を知っておきましょう。
歯の喪失
歯周病や加齢によって歯を喪失することが最もオーラルフレイルに陥りやすい前兆です。
歯の喪失は一部の症例を除き、ほとんどが奥歯から始まることが多いものです。奥歯は食べ物を咀嚼する上で大変重要な役割を果たしている歯なので、失ってしまえば食事に大きな影響が出てしまいます。
そのため歯周病の予防は歯を守るためだけでなく身体の健康を維持するためにも大変重要なことなのです。また、加齢によってはを失ってしまった場合には、インプラントや入れ歯をするなど、積極的な対策が重要です。
食事の変化
食事が偏ったなと感じたときには注意が必要です。
高齢者の多くは加齢の影響で嚥下機能が低下し、食事の際にむせやすくなることがあります。また、歯周病によって歯が動きやすくなってしまっていたり、唾液が減少しやすくなることで口の中が乾燥たりするので一部の食べ物が食べにくくなってしまいます。
これらの影響によって食事への意欲が減少し、必要な栄養分まで不足してしまい身体に悪影響が出ます。食事が減れば必然的に咀嚼する回数が減り、口元の筋肉も衰え次第に口の中の食べ物をこぼしてしまうようになします。
食事の様子をしっかりと観察し、こういったオーラルフレイルの前兆を見逃さないようにしましょう。
滑舌の変化
言葉の滑舌の変化を見逃さないようにしましょう。
明確な発音ができるかどうかは、舌の動きによって大きく変わります。舌の機能が低下してしまうと滑舌が悪くなってしまうのです。
また、歯が失われてしまうと滑舌が悪くなることもありますので注意が必要です。
滑舌が悪くなってしまうと他者とのコミュニケーションが困難になり、社会的な関わりを避けてしまうようになります。デイサービスに行きたくないなど、他社との交流を嫌ったり他社との交流に関心がなくなってきたというときにはオーラルフレイルを疑いましょう。
最後に
いかがでしたか?
ご家族の健康状態は把握していても、お口の中までしっかりと把握するのは難しいかも知れません。
しかし歯や口腔内の健康が全身の健康と深い関わりがあるのは明白です。なにか心配ごとがあれば歯科医院にすぐに相談し、早期発見早期治療を心がけましょう。
自発的に歯科医院に行くことが難しい高齢者の方も、ご家族のサポートやお声がけがあれば歯科医院に通う意欲が湧いてくるのではないでしょうか。