元気な赤ちゃん、おとなしい赤ちゃん、夜泣きする赤ちゃん、機嫌が良く、よく寝て手がかからない赤ちゃん、よく笑い愛嬌のある赤ちゃん、男の子だから、女の子だから、個性だからと思っていませんか?
なんだかうちの子、歯が黄色い!黒っぽい! 虫歯になりやすい! なかなか歯がはえない!
甘いおやつのせいかしら?歯磨きがきちんとできていないから?と思っていませんか。
もちろんお砂糖などの入った甘いものをだらだら食べていれば虫歯になりやすいですし、歯磨きができていなければ、歯が黄ばんだり、虫歯になるのも事実です。
でも、同じような食生活をしていても、全ての子どもに虫歯ができるわけではありません。
そこにはお母さんのお口の健康や栄養が重要なキーがあります。
今回は子どもの健康はお母さんの健康に関係しているというお話です。
Contents
歯や骨ができるのに何が必要?
歯ができて、育つのに必要な物は何でしょう?
タンパク質
歯の元である、歯胚の材料になります。
また歯にカルシウムを貯めるのにも必要です。
鉄・ビタミンC
歯の象牙質の土台を作ります。
ビタミンA
歯のエナメル質の土台を作ります。
口の中の粘膜を強くします。
カルシウム・マグネシウム・亜鉛
歯胚(歯の元)の石灰化(カルシウムの沈着させ、歯を硬くする)に重要です。
ビタミンD
カルシウムの吸収を助け、石灰化を調整します。
このように、強く丈夫な歯に育つにはいろいろな栄養が必要です。
歯ができる時期にこのような栄養が足りないと歯が弱くなって虫歯になりやすかったり、エナメル質がうまくできずに黄色っぽい歯になったりしてしまうのです。
それではいつその栄養が必要なのでしょうか?
歯はいつ作られるの?
まずは乳歯をみてみましょう
歯の種類 | 歯胚形成
(歯の元) |
石灰化開始
(カルシウムの沈着) |
歯冠完成 |
乳中切歯(前歯) | 胎生 7週 | 胎生4〜4.5ヶ月 | 1.5〜2.5ヶ月 |
乳側切歯(前歯) | 胎生 7週 | 胎生4.5ヶ月 | 2.5〜3ヶ月 |
乳犬歯 | 胎生7.5 週 | 胎生5ヶ月 | 9ヶ月 |
第1乳臼歯 | 胎生 8週 | 胎生5ヶ月 | 5.5〜6ヶ月 |
第2乳臼歯 | 胎生10週 | 胎生6ヶ月 | 10〜11ヶ月 |
乳歯は歯胚形成が胎生7~10週で、石灰化開始は胎生4~6ヶ月ですので、妊娠初期にしっかりと栄養を取っていないと乳歯に影響してしまいます。
永久歯はどうでしょうか。
歯の種類 | 歯胚形成 | 石灰化開始 | 歯冠形成 |
中切歯 | 胎生5〜5.25ヶ月 | 3〜4ヶ月 | 4〜5歳 |
側切歯 | 胎生5〜5.25ヶ月 | 上 10〜12ヶ月
下 3〜4ヶ月 |
4〜5歳 |
犬歯 | 胎生5.5〜6ヶ月 | 4〜5ヶ月 | 6〜7歳 |
第1小臼歯 | 出生時 | 1.5〜2歳 | 5〜6歳 |
第2小臼歯 | 7.5〜8ヶ月 | 2〜2.5歳 | 6〜7歳 |
第1大臼歯 | 胎生3.5〜4ヶ月 | 出生時 | 2.5〜3歳 |
第2大臼歯 | 8.5〜9ヶ月 | 2.5〜3歳 | 7〜8歳 |
永久歯も前歯、第1大臼歯は胎生6ヶ月までに歯胚形成されるのです。
妊娠初期から中期にかけてのママの栄養が永久歯に大きく影響しています。
妊娠前に知っておいてほしいこと
タンパク質は歯や骨のような身体だけでなく、こころにも影響します。
タンパク質をもとに鉄、ビタミンB群、葉酸などによって、
やる気や判断力(ノルアドレナリン)
睡眠(メラトニン)
平穏、安定(GABA)
などの神経伝達物質が作られます。
タンパク質が足りないと些細なことでクヨクヨしたり、思考力や集中力が低下したり、眠れないなどの症状もでてきます。
妊婦さんは胎児の成長に伴いタンパク質の需要が増えます。
妊婦さんのタンパク質の必要量は1.5~2g/kg/日
また、鉄も月経により、すでに不足していて、自覚症状がなくても、もともと貧血である人も多いのです。
妊娠性貧血になると、出産時に多量の出血がみられたり、産後に疲労回復に遅延につながることがあります。
また、産後うつに鉄欠乏の関連も報告されています。
(J Nutr.2005 Feb;135(2):267-272.)
さらに、赤ちゃんへのリスクとしても、妊娠初期〜中期に貧血であった場合、早産や低出生体重児のリスクが1.2倍以上、胎児発育遅延のリスクも上がります。
有経女性では1~1.5mg/日の鉄が必要ですが、妊娠期では最低でも4mgの鉄が必要です。
母体に吸収された鉄は胎盤にある胎盤トランスフェリン受容体によって、優先的に胎児に送り込まれるため、鉄が足りないと、造血が追いつかず、母胎側のダメージが大きくなり、胎盤肥大にもつながります。
重度の鉄欠乏性貧血があると高周産期死亡のリスク、心臓中隔欠損症、アトピー性皮膚炎、喘息の発症につながる可能性があるといわれています。
妊娠と糖尿病と歯周病の関係
約7〜9%の妊婦さんが妊娠糖尿病と診断されます。
妊娠糖尿病とは妊娠中にはじめて発見された糖代謝異常のことで、血糖値の管理が大切です。
(食前100mg/dl未満、食後2時間120mg/dl未満)
皆さまはご自身の血糖値をご存じでしょうか?
いつも健康診断でやっていて正常値だから大丈夫!と思っていませんか?
健康診断で行う血液検査は大抵、空腹時(食前)ですので、糖尿病の方でなければ異常値でません。
しかし、大事なのは食後にどのくらい血糖値が上がるか?ということなのです。
多くの方は食後の血糖値を知りません。食後の血糖値は糖に対して自分の身体がどう反応するか?ということがわかります。
急激に上がってしまうと、身体へのストレスが大きく負担がかかってしまいます。
一方、歯周病と糖尿病の関係はご存じの方が多いと思います。
妊娠するとホルモンのバランスの変化によってさらに歯周病になりやすくなります。
特にエストロゲンという女性ホルモンがある種の歯周病原細菌の増殖を促すこと、また歯肉を形作る細胞がエストロゲンの標的になることが知られています。
さらに、プロゲステロンというホルモンは炎症の元であるプロスタグランジンを刺激します。
つわりなどによる食生活の乱れや栄養不足、つわりなどによりオーラルケアが不十分となることも、歯周炎のリスクを上げてしまいます。
上記のホルモンは妊娠終期には月経時の10〜30倍になると言われており、中期以降に歯周炎が起こりやすくなります。
さらに歯周病による炎症が血液を介して全身に影響することも知られていますが、妊娠中の女性が歯周病に罹患している場合、早産・低体重児の出産のリスクは7倍になると言われています。
これはタバコやアルコール、高齢出産などよりもはるかに高いリスクです。
出産後もママとつながっている
授乳によりママの栄養が赤ちゃんの栄養となりますので、この時期のママの栄養不足は直接赤ちゃんの栄養不足につながります。
授乳期には乳汁中に約11gのタンパク質を分泌するため、通常の成人より11gの追加は必要になります。
授乳期にビタミンB6が不足している母乳を飲んだ赤ちゃんは無感動(あまり笑わない)、夜泣き、ぐずり、がひどく、けいれんをおこすこともあります。
生後3〜4ヶ月でけいれんを起こすとてんかん発作と誤診され、てんかんの薬をずっと飲み続けなければならなくなることもあるようです。
また、鉄が乳幼児期に欠乏すると脳神経発達に最も重要な時期であるため、記憶力の低下、動作の継続性の欠如、精神発達指数の低下など脳神経発達に影響を及ぼします。
まとめ
ママの栄養が、赤ちゃん、子どもの栄養、成長発育に重要であることがわかっていただけたでしょうか?
子どものIQ,知能は ”胎児の食育” というくらい、妊娠中の栄養は大切です。
でも、ただ栄養を取ればいいというわけではありません。
妊娠中、出産後に関わらず、ママがピロリ菌に感染していると胃粘膜が萎縮し、栄養の吸収阻害を起こします。
また腸内環境が整っていないと、摂取した栄養を十分吸収し、活用することはできません。
さらにママの栄養状態の改善には少なくとも約1〜2年かかると言われており、胎児期(約1年)の栄養も含めると、
マイナス2~3歳から腸内環境を整え、ピロリ菌の検査をし、十分な栄養摂取をして、体調を整えることが大切です。