唾液腺は私たちが健康に生きていくために必要不可欠な唾液を分泌している重要な器官です。唾液腺から分泌される唾液には、お口の中の汚れを洗い流す自浄作用、外から体内に細菌が侵入してくるのを防ぐ抗菌・殺菌作用、消化や嚥下を助ける働きなどさまざまな役割があります。
今回は唾液腺に発症する病気である唾石、粘液囊胞、腫瘍、シェーグレン症候群などについてお伝えしたいと思います。
唾液腺の病気を発症して唾液が減ってしまえば口腔内のさまざまなトラブルの原因になりますので、この機会に唾液腺の病気について知識を深めましょう。
Contents
唾液腺の病気
唾液腺は大唾液腺と小唾液腺に分けられます。
- 小唾液腺・・・口の粘膜の至る所に存在します。
- 大唾液腺・・・耳下腺・顎下腺・舌下腺の3種類があり、それぞれ左右に一対になっています。
唾液腺にはどのような病気があるのか、見ていきましょう。
唾石
唾液は耳下腺や顎下腺で作られ、管を通って口腔内に分泌されます。この管の中のどこかで唾液に含まれる塩が固まることによって生じた結晶が唾石(塊)となって徐々に大きくなり、管を塞いでしまうことを唾石症と言います。
唾石は3種類の唾液腺中でも顎下腺に発生することが多く、砂粒大の小さなものから数cmに及ぶものまで発生することがあります。特に脱水症状の時や唾液の分泌量を抑制する薬を服用したときにできる可能性が高くなります。
本来食事を使用とすると唾液が多く分泌されますが、唾石が発生していると管の途中で唾液が詰まり、唾液腺が腫れて痛みを感じるようになります。詰まった管と唾液が溜まっている唾液腺に細菌が感染してしまうこともあります。
顎下腺に唾石が発生していると、食事の際に唾石がある側が腫れ、食事をやめて時間が経過すると腫れが治まるのが特徴です。
小さな唾石は自然に排出されるケースもありますが、唾石が発生している場所や唾石の大きさによっては手術で管の一部を切開して唾石を摘出することになり、唾液腺の中にできたものは唾液腺を摘出する場合もあります。
粘液囊胞
粘液囊胞とは小唾液腺からの唾液の分泌に異常が生じ、唾液が粘膜の下に留まってしまうことで生じる袋のようなもの(囊胞)のことを言います。
小唾液腺は唇や舌、頬の粘膜の下など口の中の至る所に存在しますが、唾液を分泌する管が非常に小さいため、噛むなどの刺激があると詰まってしまうことがあります。小唾液腺がある所に発症する可能性がありますが、特に下唇の口角の近くや舌の先端の下方に好発します。
小唾液腺から分泌された唾液が嚢胞の中に溜まるため周囲の粘膜と似た色合いをしており、なんとなく腫れているような感覚があっても粘膜が傷つきさえしなければ痛みはありません。
患部を触ったり噛んでしまって嚢胞が破裂すると腫れは治まりますが、しばらくすると再発し、何度も繰り返すうちに大きくなってしまうことがあります。嚢胞が繰り返し発生すると徐々に表面が白っぽくなることもあり、1㎝程の大きさになると内部が透け、血管が見えることで青紫色に見えることがあります。
繰り返し嚢胞が発生する場合や痛みがあり日常生活に支障がでる場合には手術で摘出すると良いでしょう。
腫瘍
唾液腺に発生する腫瘍はほとんどが良性で、約85%の唾液腺腫瘍が耳下腺に発生し、その次に顎下腺、小唾液腺、1%未満が舌下腺に生じます。
良性腫瘍
良性腫瘍で好発するのは多形腺腫です。放置すると悪性化する頻度が徐々に増し、多形腺腫癌を発症する場合があります。良性腫瘍が15年から20年ほど存在した後にのみ生じると言われています。悪性化してしまった場合は治癒率が非常に低くなってしまいます。
その他の良性腫瘍には単形腺腫・オンコサイトーマ・乳頭状嚢腺リンパ腫などがあり、多形腺腫以外の良性腫瘍が悪性化したり再発したりするのはごく稀です。
悪性腫瘍
唾液腺癌の中でも最も一般的なのが粘表皮癌という悪性腫瘍で、20代~50代に発症します。どの唾液腺にも発生する可能性がありますが、口蓋の唾液腺に発生することが多いです。粘表皮癌は悪性度が中~高度になるとリンパ節に転移することがあり、外科手術で完全に摘出することや放射線治療や化学療法の併用が必要となります。
悪性の腫瘍ができることは稀ですが、とくに舌下腺に生じたものには悪性が多いことが知られており、悪性の場合には腫瘍が急速に成長します。悪性腫瘍は隣接している組織に固着していることがあり、動きが悪く、硬いのが特徴です。
進行とともにずきずきと疼くような痛みや、神経の障害などの症状が現れ、最終的には腫瘍が発生している部分の皮膚か粘膜が潰瘍化するか、もしくは隣接組織が浸潤することがあります。
シェーグレン症候群
シェーグレン症候群とは、腺症状のドライマウス(口の乾燥)やドライアイ(目の乾燥)が主な症状として現れ、腺外症状であるリウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、進行性全身性硬化症や多発性筋炎などを合併する全身性の病気です。40歳以上の中年女性に多く起こります。
腺症状では涙や唾液を作り出している涙腺や唾液腺などの外分泌腺に慢性的な炎症が生じ、腺が委縮することで乾燥症状を引き起こします。耳下腺や顎下腺の炎症により腺が萎縮してしまうと、強い口腔乾燥と、乾燥によって咀嚼・嚥下困難、さらに会話や味覚などの障害が起こります。
シェーグレン症候群を引き起こす原因は不明ですが、現在では自己免疫疾患と言われています。
ドライマウスは口が乾燥し、パンなどの水分が少ないものが食べにくくなったり、食事中に水分を多く摂る必要が出たり、会話中に声がかすれるなどの症状が起こります。唾液が少なくなると自浄作用や殺菌作用が低下し、虫歯になりやすくなるだけでなく味覚の低下も生じる可能性が高くなります。
症状に応じて治療を受ける必要がありますが、ドライマウスやドライアイだからといって必ずしもシェーグレン症候群であるということではないので、シェーグレン症候群が原因なのかそれ以外に原因があるのかをしっかりと診断してもらう必要があります。
口腔内の乾燥を感じる場合にはまずは口腔外科を受診しましょう。
まとめ
今回は唾液腺の病気について詳しくご紹介しました。
これ以外に唾液腺の炎症や感染症もあり、有名なものには流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)があります。
自覚症状が無いケースでは、定期的な歯科検診が口腔内トラブルの早期発見に繋がることもあります。
もし今現在、口腔内に何か不安な症状がある場合には、早期発見早期治療のためにも口腔外科に相談し、久しく医師に診てもらっていないという方はこの機会に何か異常が起きていないかを医師に確認してもらいましょう。