歯をしっかり守るためにも、毎日の食生活はとても重要になります。
特に高齢者は、淡白な味付けやあっさりとした食べ物などを好むなど、嗜好が変化する場合があります。栄養バランスを整えるためにも、高齢者の食生活はよく注意しなければなりません。ここでは、高齢者の食生活の注意点についてご紹介します。
Contents
高齢者の機能低下
高齢者は、加齢に伴う機能低下が起こりやすいです。まずは、高齢者の食生活はどうなりやすいかを知っていきましょう。
噛む力が衰える
高齢者は義歯の不具合や咀嚼の低下によって、繊維質なものや固い食べ物が食べにくくなります。そのため、噛まずに食べられる形状のものや柔らかい食べ物が多くなります。
飲み込む力が衰える
高齢者は唾液の分泌量が減り、食べ物が口の中でまとめられなくなったり、飲み込む力も衰えて上手に飲み込めなくなります。また、それによって口の中の食べ物が、食道ではなく肺や気道に入り込んでしまう場合もあります。水やお茶などさらさらしている水分も注意が必要です。
さらに、反射も鈍くなってくるため、気道に入り込んでも気づかず、肺炎を起こしてしまうこともあります。
飲み込みやすくするためには、食べ物や飲み物にとろみをつけるという工夫もあります。
味覚が衰える
高齢者は味覚が衰えて味を感じにくくなります。また、美味しさを感じられにくくなるため、食事が進まず、食事量の低下による低栄養を招く恐れがあります。
高齢者の食生活の注意点
それでは、高齢者の食生活の注意点についてご紹介します。
栄養バランスに注意する
高齢者は、あっさりとした味付けや淡白な食材を好む傾向があります。また、認知症の症状の一つには、嗜好の変化があります。
一人暮らしの場合や一人で過ごすことが多い場合は、どうしても簡単に食べられるお茶漬けや麺料理、パンなどで済ませてしまいがちですが、高齢になるほどタンパク質の摂取は重要になります。栄養バランスを良くするには、主食と主菜、副菜の料理をそろえることが大切です。
高齢者が食べやすい食べ物と食べにくい食べ物
高齢者には、食べやすい食べ物と食べにくい食べ物があるので、どうしても栄養バランスが偏りがちです。
【食べやすい食べ物】
- おかゆ状のもの
- ヨーグルトやアイスクリームなど乳化されたもの
- ポタージュスープやシチュー、カレー
- ピューレ、果物の缶詰をミキサーにかけたもの
- すりおろしたとろろいも
- ゼリーや水ようかん、煮こごり
- プリンやムース、卵豆腐、茶わん蒸し
- つみれやつくね、ハンバーグなどのミンチ状のもの
【食べにくい食べ物】
- キュウリやキャベツ、レタスのような硬い生野菜
- がんもや凍り豆腐、はんぺんなどスポンジ状のもの
- フキやゴボウ、たけのこ、セロリ、水菜、パイナップルなど繊維が残るもの
- 酢の物や酢味噌、かんきつ類など酸味の強いもの
- スパゲッティやラーメン、パン、こんにゃくなど弾力が強いもの
- 小吹芋やふかし芋、そぼろ、チャーハンやピラフ、お茶漬けなどまとまりがなくボソボソするもの
- 海苔やわかめ、こんにゃく、もち、青菜などの葉など、のどに詰まりやすくて口の中に張り付くもの
- 水やお茶、みそ汁、すまし汁など口の中でまとまりにくく喉へ流れやすいもの
食べにくい食べ物を食べやすくするポイント
食べにくい食材は、飲んだり噛みやすくするための工夫をしましょう。
【噛みやすくする工夫】
- 肉や野菜、イモ類は一口大の食べやすい大きさに切る
- 噛みにくい肉は叩いたり、脂身や皮は取り除くか切り目を入れる
- 野菜は時間をかけて加熱して歯茎でつぶせるくらいまで柔らかくする
- 野菜は隠し包丁を入れて噛み切りやすくする
- トマトやナスなどの野菜の皮はむいて、切り目を入れる
- 葉野菜は柔らかい葉先を使用する
- 根菜は繊維を断ち切るようにして切る
【飲み込みやすくする工夫】
- 食材は煮崩れるくらいに加熱して上顎と舌でつぶせるくらいまで柔らかくする
- なめらかになるように裏ごししたりミキサーにかける
- 飲み込みをサポートするために、ゼラチンや片栗粉、コーンスターチなどのとろみ調整食品を使用する
高齢者の食事の姿勢
高齢者が安全に食事するためには、食べるときの姿勢にも注意しましょう。食べにくい姿勢は、食事に集中しにくくなるので、誤嚥を引き起こしやすくなります。また、食事をする前は、目がしっかり覚めているか意識状態の確認をする必要があります。
椅子で食事する際は、背筋を伸ばして顎を引き、やや前かがみになりましょう。背もたれのある椅子に深く座って、足を床につけます。テーブルの高さは腕をのせて肘が90度に曲がる程度が望ましいです。イスとテーブルの高さが合っていなかったり、体とテーブルの距離が遠いと、姿勢が不安定になるので、食べ物をこぼしたり誤嚥につながってしまいます。
ベッドで食事をする際は、背の角度を45度から60度以上になるように調整し、頭にまくらなどを置いてやや前かがみになるようにします。また、足がすべって落ちないように、クッションを置きましょう。
仰向けに近い状態で食事をすると、ベッドとテーブルの距離が離れてしまうので、前かがみになりにくく顎が上がってしまいます。すると、食べたり飲み込んだりしにくくなってしまいます。
口腔内を良い状態に保つ
高齢者は歯がなく、思うように食べられない、入れ歯が合わずに痛みがある、などの口腔トラブルを抱えやすい状態です。思うように食事がとれない場合が少なくありません。そのため、できるだけ口腔内を良い状態に保っておくことが大切です。
また、高齢者は唾液が少なくなるので、歯肉炎や歯周病を招き、口腔内が不衛生になりやすいのです。そんな状態を防ぐためには、歯磨きや歯科医院の定期健診などで口の中のメンテナンスを定期的に行うようにしましょう。
まとめ
高齢者はどうしても食べにくく飲み込みにくい状態になります。しかし、食事は毎日の楽しみでもあり、生きる活力にもなるのです。食事の介助は、危険な誤嚥に注意して、安全委食事ができるように気を付けましょう。
また、高齢者が食事に集中できるように、テレビやラジオなどを消すことがおすすめです。暗い部屋では料理や手元がわかりにくくなるので、部屋の明るさにも配慮することが大切です。このように、高齢者の食事は環境にも気を付けましょう。
健康な口腔内を保つためにも、毎日の食生活に気を付けて、高齢者も介護者にとってもストレスの少ない生活を目指しましょう。