
矯正歯科の治療法は細かく分けると10種類以上も存在することをご存知ですか?
治療に使われる装置の1つであるブラケットの素材を選べることや装着する位置の組み合わせ方によって、患者さんに合わせた様々な治療法が可能となるのです。
また近年では、ブラケットを使わずに行える矯正歯科もあります。
今回はこれらの中から代表的な4つの治療法のそれぞれの治療期間について紹介します。
Contents
それぞれの工程に要する時間
まずは一般的な歯科医院での矯正歯科の流れと所要時間を説明します。
カウンセリング(30分~60分)
歯並びや嚙み合わせに関する患者の悩みや治療の希望などを聞きながら、口内の基礎的なチェックが行われます。
不正咬合や口の機能の状態を診査した後、今後予定される治療内容や使われる装置、費用などについて説明を受けます。
矯正検査(40分~60分)
口腔内写真、頭蓋骨(顔全体)が映るセファログラムと呼ばれるレントゲン写真、歯列全体を映すパノラマX線写真などを撮影します。
歯や顎の状態を詳細に把握し、安全な治療の計画を立てるために必須のプロセスです。この際、歯型もとります。
診断・治療計画の説明(30分~60分)
カウンセリングと検査の結果をもとに立てられた治療計画の説明が行われます。
患者さんと医師との信頼を築くため、また患者の不安や緊張をやわらげるためという目的があります。
治療の選択肢や費用などについて、口頭だけでなく写真や模型を使用して具体的に説明されます。
患者さんはこの時点でも、疑問や希望があれば積極的に伝えることができます。
矯正装置の装着と治療開始
患者との合意のもと決定した治療計画に沿って治療が開始します。
矯正装置をつけて我慢できないほどの痛みや不快感がなければ、定期的に通院で経過を観察していきます。この経過の中では、装置の微調整や計画の変更が行われるので医師の指示を守って通院することが大切です。
通院のタイミングは治療した方法によって異なりますが、おおむね1~3か月に1回が通常です。1回の治療時間は15分程度で済むこともあれば、状態によっては1時間以上かかることもあります。
保定・メンテナンス
1年~3年の間に経過を見ながら、結果が良好であれば装置が取り外されます。
歯は常に動いており装置を取った後に放置し続けると、矯正前の状態に戻る可能性があるのでメンテナンスが必要となります。
約2年の間はリテーナーと呼ばれる保定装置を装着し、歯や歯の周辺組織を安定させます。
メンテナンスのための通院は、3~6か月に1回程度が目安です。
4つの矯正歯科とそれぞれにかかる治療期間
ワイヤー矯正
歯の表面にブラケットという装置を取り付け、そこに数珠繋ぎ式にワイヤーを通すことで歯を適正な位置に動かしていく治療法です。
ブラケットには大きく分けて金属と非金属の2種類があります。金属はメタルブラケットや金属ブラケットと呼ばれ、素材にはアルミとスチールの合金やチタン合金などが使われています。
通常、金属アレルギーの心配がある方にはチタン製が勧められます。メタルブラケットを使用した場合の治療期間は、リテーナーの期間を除いて約1年~2年半です。
非金属のブラケットは審美ブラケットやクリアブラケットと呼ばれ、色が半透明であることから、審美性(歯の見た目)に優れていることや、金属アレルギーのリスクが少ないといったメリットがあります。
素材にはプラスチックやセラミックが使われており、金属に比べて費用が高額な点はデメリットと言えます。
また、矯正の強度もやや劣るため治療期間も約2年~3年と少し長くなる場合があります。
リンガル矯正
リンガル矯正でもワイヤーは使用されますが、歯の表ではなく裏側にブラケットが装着されます。審美ブラケットと比較しても、より外からは見えにくいというメリットがあります。
リンガルには「舌の」という意味があることから、舌側矯正とも呼ばれます。常に舌に触れることから違和感に慣れるまで時間がかかることや、通常のワイヤー矯正に比べて約1.5~2.0倍費用が高くなることがデメリットです。
治療期間は約2年~3年、もしくはそれ以上かかる可能性もあります。
また、下顎は表に、上顎は裏に装置をつけるハーフリンガルという治療法もあります。
どちらも歯科医師の高い技術が必要であるため、どの医院でも行われている治療法ではありません。
マウスピース矯正
透明のマウスピースを1日20時間以上装着して矯正していく治療法です。
インビザラインやアライナー、オペラグラスといった様々な種類があり歯科医院によって取り扱う製品が違います。
新しい治療法で通常の矯正歯科との違いがいくつかあります。
・ワイヤーやブラケットを装着しない
・取り外しができるので食事や歯磨きはいつも通り可能
・治療期間が半年で済むケースもある
取り外し可能ではありますが、定められた時間(1日20時間)は装着していなければ矯正の効果が薄れることになります。
治療期間が短いケースがあるのは、そもそもマウスピース矯正は、比較的軽度な方向けの治療法であるためです。通常、約2週間ごとに微調整が加えられた新しいマウスピースに取り換えていき徐々に歯を動かしていきます。治療期間は半年~2年半です。
インプラント矯正
小さなチタン製のインプラント(ネジ)を顎の骨に埋入させ、それを支点(固定源)に他の歯を引っ張ることで歯を動かし矯正する治療法です。
抜歯治療のインプラントで使用されるネジの直径は3 mm~5mm程度ですが、矯正インプラントでは1.5mm程度のものが使われます。このことからミニインプラントやマイクロインプラントとも呼ばれます。
外科的治療(手術)という形にはなりますが、痛みや出血はほとんどなく施術時間は15分~20分程度で済みます。
歯に持続的に強い矯正力がかかるため、装着してからの治療期間も約1年~1年半と短期間であるケースが多いです。
最後に
今回ご紹介した矯正歯科の種類や期間はあくまでも一例です。
治療期間は患者さんの持病の有無やライフスタイルなどによっても大きく変わります。また、患者さんの口内状態によっては自分が希望する治療が行えない場合もあることから「インプラント矯正=治療が早く終わる」と断定できるとも限りません。
カウンセリングや定期検診の場で歯科医師としっかりと相談し、費用・期間・適合性などを総合的に見て自分にはどの矯正歯科が最適なのかを選定することが大切です。