エナメル上皮腫って何?その種類や治療方法について | 歯と健康のラボラトリー

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エナメル上皮腫って何?その種類や治療方法について

エナメル上皮腫とは、歯原性腫瘍という歯を形成する組織に発症する腫瘍の中で、約10%という最も高い割合で発症する良性腫瘍の一種です。

口の中に発生する歯原性腫瘍には「エナメル上皮腫」のほかにも嚢胞ができる「角化嚢胞性歯原性腫瘍」、歯の形成異常によって発症する「歯牙腫」などがあります。主な歯原性腫瘍にはこの3種があり、一つが発症することはもちろんのこと、これらの歯原性腫瘍が合併することもあると言われています。

今回は歯原性腫瘍の中でも最も高い発症率であるエナメル上皮腫について詳しくお伝えしたいと思います。歯原性腫瘍という言葉を初めて聞いた方も、エナメル上皮腫について知りたいという方も是非参考になさって下さい。

Contents

 エナメル上皮腫とは?

エナメル上皮腫とは、顎骨に発症する歯原性腫瘍の一つで、エナメル質を形成する組織とよく似た構造をしていることからその名前が付けられました。歯の元となる歯胚のエナメル器が腫瘍化することでエナメル上皮腫が発症します。

エナメル上皮腫は顎の骨に生じる腫脹で、下顎骨に発症することもあれば上顎骨に発症することもあります。しかしエナメル上皮腫は下顎骨に発症する割合が80~90%となっており、圧倒的に下顎骨に発症する割合が高くなっています。

また、下顎骨の中でも最も奥にある歯(大臼歯)から更に後方にかけての部位に発症することが多く、前歯の周辺に発症することは少なくなっています。

エナメル上皮腫のほとんどが良性腫瘍であると言われていますが、エナメル上皮腫のうち1%以下の割合で悪性のエナメル上皮腫が発症していることが確認されています。エナメル上皮腫は他の良性腫瘍とは異なり、再発してしまうケースも多いことが特徴で、摘出に成功しても再発してしまい、顎の骨を切除しなければならないこともあります。

エナメル上皮腫は20~30代に発生することが多いと言われていますが、10代で発症したケースもあります。男女比ではほとんど差がありませんが、わずかに男性の方が発症数が多くなっています。

エナメル上皮腫の症状

顎骨に痛みを伴わない腫脹が見られることがエナメル上皮腫の症状で、痛みを伴わない腫れを無痛性腫脹と言います。エナメル上皮腫を発症しても痛みを伴わないため、自覚症状がほとんど無いことがエナメル上皮腫の大きな特徴です。

エナメル上皮腫は痛みが無いので発見されずに放置されてしまうことが多く、腫脹は数年かけて徐々に大きくなっていき、最悪の場合エナメル上皮腫が大きくなって顎の骨が吸収され、顔貌が左右アンバランスになるほど腫れてしまうこともあります。数年かけて大きくなったエナメル上皮腫も、感染したり炎症を起こしたりしない限りは痛みを感じることはほとんどありません。

自覚症状が無いため早期発見が難しく、歯科治療を受ける際などのレントゲン撮影によって偶然発見されることがほとんどです。

エナメル上皮腫が発見されないまま放置されてしまうと、次第に顎が腫れてきたり歯が動揺したり、歯並びが悪くなるなどの症状が現れるようになります。

ほとんどのエナメル上皮腫が良性腫瘍ではありますが、このように日常生活に支障が出るような症状が現れるため注意が必要です。また、良性腫瘍が悪性化する可能性もゼロではありませんので、医師による適切な治療を受けることが重要となります。

エナメル上皮腫の治療法

他の良性腫瘍とは異なり再発してしまうこともあるエナメル上皮腫は、どのような治療が行われるのでしょうか。

開窓療法

エナメル上皮腫によって顎の骨が吸収されてしまって薄くなった部分の骨を取り除いて圧を抜き、縫合せずに解放したままの状態にして治癒を目指す治療法を開窓療法と言います。

 

空洞になった部分に軟膏のついたガーゼを詰め、定期的にガーゼをガーゼを交換していきます。圧がなくなるので、周りから少しずつ骨ができ、徐々に腫瘍は小さくなっていきます。ある程度小さくなった所で、腫瘍を全摘出します。

開窓療法は、単房性といって、ひとつのふくろ状のエナメル上皮腫の場合に特に効果があります。治療期間はかかりますが、開窓療法で腫瘍を小さくしてから摘出することで、大きな手術による顎の変形や神経麻痺など機能の損傷のリスクを最小限にする事ができます。

摘出

エナメル上皮腫を摘出する手術を行うこともあります。

多房性のエナメル上皮腫の場合には原則的に摘出術が行われますが、状態によっては開窓療法と摘出術を繰り返して行われることもあります。

顎骨切除

エナメル上皮腫を摘出するのと同時に、顎の骨を切除する必要がある場合に行われるのが顎骨切除術です。腫脹ができている部位や範囲によっても切除する骨の量が異なりますが、下顎骨を完全に切り離す必要がある場合には下顎骨が2つに分かれてしまい食べ物を噛むことができなくなってしまうため、腰・肩・足などから骨を移植する手術も必要になる場合があります。

骨を移植する目的は下顎骨の形態の回復はもちろんのこと、下顎骨を欠損することによって顔貌が変化してしまうことを改善する目的があります。ただ骨を移植するだけでは再び噛むことができないため、部分入れ歯を入れるかインプラント治療を行うことになります。

エナメル上皮腫が歯の周辺に限られている場合には下顎骨の高さの半分ほど切除するため、下顎骨が2つに分かれることもなく、下顎骨に骨を移植する必要はありません。

エナメル上皮腫は再発率が高い歯原性腫瘍であるため、顎骨切除が必要になりますが、その他の歯原性腫瘍である角化嚢胞性歯原性腫瘍や歯牙腫においては再発するケースが少ないため顎骨切除が行われるケースは少なくなっています。

骨移植後のインプラント治療について

エナメル上皮腫は20~30代という若い年齢に発症することが多いため、骨移植後に部分入れを入れることに抵抗がある方が多いのが現状です。

近年ではエナメル上皮腫によって噛む機能を失ってしまった方においては、インプラント治療が保険適応の対象となりました。インプラント治療を受けることでしっかりと噛む機能を回復できる上に、入れ歯のように違和感もありません。

もしエナメル上皮腫を発症してしまった場合にも、歯科医療の進歩によって噛む機能を回復できるようになっていますので、安心して医療機関に相談しましょう。

まとめ

エナメル上皮腫は歯原性腫瘍の中でも最も多く発症する腫瘍ですので、他人事と考えず口腔内をよく観察する習慣を身に付け、定期的に歯科検診を受診しましょう。

ほとんどが良性とは言え再発の可能性が高く、稀に転移したり悪性であるケースもあるので、万が一顎の骨が腫れてたり違和感がある場合には放置せず、早めに口腔外科や歯科医院に相談しましょう。

 

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