オーラルフレイルを防ぐために訪問診療でできること | 歯と健康のラボラトリー

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オーラルフレイルを防ぐために訪問診療でできること

みなさんは「オーラルフレイル」という言葉をご存知でしょうか。フレイルとは「衰え・虚弱」という意味ですので、口や歯の機能の衰えを意味する言葉です。

オーラルフレイルは口の乾燥・滑舌の低下・食べこぼし・噛むことができない食品の増加・むせてしまうなど、さまざまな口腔機能の低下から始まります。そういった症状をそのまま放置すれば徐々に進行し、口腔機能がどんどん低下してしまいます。

オーラルフレイルはさまざまな身体の衰えとも深い関わりがあるため、口腔機能の低下には周りの方がいち早く気付き、対策を取る必要があります。些細な口腔機能の低下に早い段階で気が付き、適切な対応をとることによって口元だけでなく全身の健康状態の維持・改善に繋がるのです。

今回は健康を脅かすことになるオーラルフレイルを予防するために、訪問歯科でできることをご紹介します。

ご自身で歯科医院に通院することが困難な方がご家族にいらっしゃる方も、訪問歯科ならご自宅や施設に歯科医師や歯科衛生士が直接訪問することができますので、是非参考になさって下さい。

Contents

そもそも訪問歯科とは?

訪問歯科とは、歯が痛い・入れ歯が合わない・口臭がひどい・うまく食べ物を飲み込むことができないなど、さまざまなお悩みを抱えているのにも関わらず、ご自身で通院するのは困難である方に対し、ご自宅や施設などに直接歯科医師や歯科衛生士が訪問して診療を行うシステムです。

訪問歯科には保険が適用されますので通院した場合とのご負担額は大きく変わりませんので、非常に便利です。

寝たきりの方やお身体が不自由な方、認知症などで歯科医師による診療を受けるのを諦めているという方、またはそのようなご家族をお持ちの方の悩みを解決することができます。患者さまご本人や付き添いの方が移動することなく治療を行なうことができますので、心身の負担が軽減されます。

訪問歯科でオーラルフレイルを予防することの重要性

歯やお口の健康に対する意識が低いまま年齢を重ねると、気が付いた時には手遅れとなり、最悪の場合歯を失ってしまうこともあります。

歯を失ってしまうなど口腔機能が低下すれば、食欲の低下や食の偏りが起きやすくなり、栄養バランスが崩れてしまいます。すると食欲だけでなく体力が低下し、次第に筋力が失われ、社会生活そのものに対する意識も低下してしまいます。

年齢を重ね仕事をしなくなると余計に外部と交流する機会が減りますし、歯の喪失がきっかけで体力の低下などが起こってしまうと、生活機能が低下するという悪循環に陥ってしまいやすくなります。

歯を失うということは、ただ単に口の中の状態を悪くするだけでなく、全身の健康状態の悪化や社会性の低下に直接影響してしまうことになるのです。

だからこそ訪問歯科を利用し、お口の中の定期的なケアやバランスの良い食事、人との交流などを維持することは、加齢による筋力の低下などを予防し、健康寿命を伸ばすことに繋がるのです。

訪問歯科でできること

以前の訪問診療では医療器具の携帯が思うようにできず、歯科医院にお越しいただいた際と同様の診療を行うのが困難でした。

しかし近年では、持ち運びができるポータブルユニットやレントゲンなど、歯科治療の際に必要な機材が開発されたことにより、歯科医院で行う診療と同レベルの治療を行うことができるようになっています。

虫歯や歯周病などの基本的な歯科治療

先ほどもお伝えした通り訪問歯科では、歯科診療に適した持ち運び可能な治療器具を一通り揃えています。

そのため高齢者に多い虫歯の痛みや歯周病、歯茎の腫れや入れ歯が合わないなど、歯科医院と同様に治療することができます。

虫歯や歯周病はそのまま放置してしまうと歯を失ってしまうことに繋がりますので、訪問歯科の定期的なケアで早期発見・早期治療をすることがオーラルフレイルを予防することに繋がります。

嚥下の検査・指導・訓練

食べ物をしっかりと噛み、飲み込むことができないと、窒息や低栄養、脱水や誤嚥性肺炎などの危険性が高まります。

訪問歯科では内視鏡検査や食事指導やリハビリテーションなどを行い、飲み込み機能の低下を防止します。食べ物の噛み具合や飲み込む様子などを観察し、必要な方には嚥下訓練を行います。

むせることが増えた、食べるのに1時間以上かかるなど、何か異常を感じた場合には歯科医師に相談しましょう。

口腔ケア

虫歯や歯周病が原因で歯が欠損してしまうと、噛み合わせる部分が少なくなることで硬いものを噛むことができなくなってしまいます。欠損していないとしても、痛みがあったりグラついている歯があれば咀嚼しにくくなります。

また、唇や頬、舌や鼻咽腔の機能が低下していると、食べこぼしや滑舌が悪くなる、飲み込みにくいなどのお悩みがでてきます。

薬剤などの影響で口腔内が乾燥しやすくなっていることも考えられるため、訪問歯科では歯科医師が歯や口周りの機能などの状態を確認し、その方に合わせた口腔ケアを行います。

高齢者はさまざまな理由でご自身で歯を磨いたり口の中のお手入れをするのが難しい状態になっています。歯に付着した食べかすだけでなく、入れ歯の裏側などの汚れも放置された状態になっていることが多くあります。虫歯や歯周病が進行しやすいだけでなく、炎症などを起こしやすい状態になっています。

こういった状況を改善するために口腔ケアは毎日行うことが大切です。訪問歯科ではご家族や施設のスタッフの方に口腔ケアの正しい方法をお伝えしています。

まとめ

社会性の維持することはご本人の努力や意識の改善でカバーすることができますが、歯や口の機能などを定期的に確認し、ケアをするのは歯科医師や歯科衛生士に頼るのがベストです。

訪問歯科ではオーラルフレイルを予防するために口臭やお口の中の乾燥、口腔のケア方法や、飲み込み方などを指導しています。

万が一寝たきりの状態であったとしても、ご自身の口から食べて味わうということを楽しみ、生活の質を向上することができるようにお手伝いができるかもしれません。

介護をされている方で、ご家族が歯を磨かせてくれない、口を開けるのを嫌がる、などお口のケアや食事、飲み込み方など、お口に関わることは歯科医院に相談しましょう。

単に長生きをするのではなく、「健康」に長生きをすることを目的にオーラルフレイルを予防しましょう。

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