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ご存知ですか?「訪問歯科」の基礎知識

遥か昔から「口は病気の入り口・魂の出口」と言われています。口は食べることだけでなく、生きていくために重要な役割を果たしているため、口腔内の健康を脅かすようなことがあればすぐに解決することが大切です。

しかし歯科医院などに通うことができない状況にある要介護高齢者の多くは、口腔内の環境に何らかの問題を抱えているにも関わらず適切な治療を受けることができなくなっており、大切な歯を守ることが困難になっています。

そのままでは口腔内の環境を健康にすることも維持することもできず、病気が悪化するリスクを高めることにも繋がってしまいます。

そこで皆様に知って頂きたいのが何らかのご事情によって外出が難しいという方にも安心して利用して頂くことができる「訪問歯科」という分野です。

ご家族に外出が困難な方がいらっしゃるという方は、是非参考になさってください。

歯科治療が必要な高齢者

高齢になると、歯科医院に通院したくてもできない方が大勢いらっしゃいます。

外出が困難な要介護者の中で、歯科治療が必要な方の4人に3人が歯科治療を受けていないというのが現状です。なんと外出が困難な方のほとんどがお口の中のケアが適切に行われていないのです。

歯周病や虫歯などは初期には気が付かないことが多く、痛みが無かったとしてもお口の中が健康であると言い切れないものです。目立ったトラブルがないからと放置してしまうと、取り返しのつかないことになってしまうことがあります。

口から食べるということは、真の栄養補給になり、生きる喜びに繋がります。また、口から食べるということは病気の回復を早めるという効果も明らかになっているため、介護が必要で外出ができない方こそ、歯科治療が必要なのです。

訪問歯科とは

訪問歯科とは、歯の事で何か問題を抱えていても歯科医院に通院できない状態の方を対象に、歯科医師や歯科衛生士が自宅や施設に訪問して治療することを言います。

歯が急に痛くなってしまった方や、入れ歯が合わなくて困っているという方のために訪問して治療することを「往診」と言い、定期的な日時を決めて訪問してケアを行うことを「在宅診療」と呼びます。そして往診と在宅診療の両方を合わせて「訪問歯科」と呼んでいます。

要介護の高齢者の場合、歯科医院に通院したくても出来ない方が非常に多くいらっしゃいます。そんな方でも安心して歯科治療や口腔ケアを受けることができるのは、嬉しいことですよね。

訪問歯科の内容

  1. 虫歯・歯周病の治療や予防
  2. 入れ歯の作製・修理・調整
  3. 口腔ケアで感染症や高齢者に多い誤嚥性肺炎の予防
  4. 摂食嚥下障害のリハビリテーション

稀に訪問診療用の機材では対応しきれないケースもありますが、訪問歯科では歯科医院で行うほとんど全ての治療をご自宅で受けることができます。

訪問歯科を受けられる人

訪問歯科は、希望すれば全員が受診することができるというものではありません。

あくまでも歯科治療を受けたいけれど、通院することが困難な方が対象です。ただ単に歯科医院に通院するのが面倒だからというような理由では訪問歯科を受診することができません。

保険を使用して訪問歯科を受けるには、いくつかの決まりがあります。

  1. 高齢で介護を受けている、身体が不自由で通院が難しいなど、自分で近くの歯科医院に通うことができない正当な理由がある方
  2. 訪問する歯科医院から半径16㎞以内に自宅や施設があること

訪問歯科を依頼する場合には、まずは訪問範囲かどうかを確認しましょう。

訪問歯科の依頼方法

訪問歯科を受けたい場合には、いくつかの方法で依頼することができます。さまざまな窓口や依頼方法がありますので、一番気軽にできる方法で相談しましょう。

①かかりつけの歯科医院

常日頃から受診している、かかりつけの歯科医院があれば、ご本人かご家族が電話等で依頼することができます。

② 地元の歯科医師会の事務局

お住いの地域の歯科医師会では、在宅歯科医療や歯科訪問診療についてご相談に応える窓口を開設しています。地元の医師会のホームページも確認してみましょう。

③ お住まいの都道府県の歯科医師会

近隣の歯科医師会の連絡先が分からない場合には、都道府県の歯科医師会相談しましょう。地元の歯科医師会の連絡先を確認することができます。

④施設のケアマネージャーや訪問看護師

医療や介護にかかわるケアマネージャーや訪問看護師等に相談しましょう。まずは診査等を行い、治療やケアの計画を立てることができます。

⑤病院の担当看護師

病院で担当してくれる看護師や地域医療連携室のスタッフに相談しましょう。

以上の他、行政でも相談窓口を設けているところがありますので確認してみましょう。

訪問歯科を受けるために

訪問歯科を受けるための準備をしておきましょう。

用意しておくもの

  1. 医療保険、後期高齢者医療保険、介護保険などの各種保険証
  2. おくすり手帳や服用説明書など飲んでいる薬の内容を確認できるもの

治療の場所の確認

  1. 流しなどの水回り
  2. コンセントの位置
  3. 脇に一人分のスペースがとれるような場所の確保

治療の立ち会い

訪問歯科を受ける際には、出来るだけ家族の方が立ち会うようにしましょう。特に最初の回では、今後どのような治療を行っていくか医師と相談することになります。

訪問歯科にかかる費用

訪問歯科の治療には、医療保険と介護保険が適用され、それぞれの決められた分の自己負担額となります。また、受ける治療の内容や口腔ケアによって治療費が異なり、原則として保険診療費がこの治療費に加算されることになります。

医療保険の点数には、訪問診療料が加算されます。1割~3割が自己負担金となりますが、「生活保護受給」や「心身障害者医療受給」による公費負担が発生する場合があります。

訪問するためにかかった交通費を請求することが認められていますので、訪問歯科を依頼する歯科医院によっては交通費が発生する場合がありますので、依頼する際に確認すると良いでしょう。

まとめ

高齢者は虫歯の発生リスクが高く、歯科疾患をそのまま放置してしまえば歯の喪失を引き起こし、咀嚼機能を始めとする口腔機能の低下を招きます。

歯を失うことになれば食べるという楽しみばかりではなく、生活の質そのものが低下し、生きるため意欲に悪い影響を与えることになってしまいます。

多くの高齢者が義歯の修理や咀嚼機能のリハビリテーション、口腔ケアなどを必要としているということを見逃さないようにし、訪問歯科を利用して高齢者の口腔内の健康を周りの方が守ってあげましょう。

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