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子どもの咀嚼機能について~噛むことの大切さ~

哺乳を終え、離乳食に移るときから大切なお子さまの口の発育を見守ることは、お子さまが一生を健康に過ごすことができるようにするためにも大切です。しっかりと噛んで食事をするということは、身体の発育だけでなく、精神面の発育などにも深い関わりがることが分かっているため、しっかりと噛んで食事をすることができるように見守るのはご両親の大切な役割なのです。

「噛んで食べる」ということは、大人になれば当然できるようになると思っている方が多いようです。しかし現実には、歯科医師などが推奨する「1口に30回噛んで食べる」という正しい咀嚼ができていない方が大人でも多くいらっしゃいます。

大人でもしっかりと噛むことができない方がいるわけですから、当然お子さまに関しては、周りの大人がしっかりと教えてあげないと正しくできるものではありません。

母乳などの液体を飲む力は生まれながらにして赤ちゃんには備わっていますが、噛んで食べる能力は親御さんが適切に離乳を進めることによって初めて可能になるものです。

今回はお子さまの咀嚼機能の発達がなぜ重要なのか、噛むことの重要性や発育への影響に関してお伝えします。もうすぐお子さまが産まれるという親御さんや、すでにお子さまがいらっしゃるご夫婦は、是非参考になさって下さい。

お子さまの発育に重要な”咀嚼”とは

咀嚼とは、口の中に含んだ食べ物を飲み込むことができるように、細かく噛み砕くことを言います。

咀嚼をすることで食べ物を体内に取り込み、唾液が多く分泌されることで消化酵素がしっかりと働き、消化や吸収をスムーズに行うことができるようになります。すると胃腸への負担が軽減します。また、唾液には多くの抗菌物質が含まれているため良く噛むことは歯周病や虫歯の予防にも役立ちます。

その他にも咀嚼は顎の発育や筋肉の発達にも役に立っており、顎の骨が丈夫になる事で歯を健やかに育てることができます。

咀嚼することで食べ物の食感や味を感じ取り、咀嚼することによる刺激が脳に伝えられ、脳が活性化します。よく噛むことが脳の記憶や判断や思考、意欲などを司る部分まで活性化させることができるとも言われています。

噛むことの重要性に関しては、経験上実感しているという方も多いかも知れませんが、科学的な側面からも実証されています。

お子さまが食べ物を食べる際に「正しく噛む」ということを身に付けることは、子どもの咀嚼機能の発達を考える上でも食事の面から見ても非常に重要なことなのです。

お子さまの咀嚼機能の発達について

「噛んで食べる」ということは当たり前のことのように感じてしまいやすいですが、お子さまの成長の中で自然に身に付くものではないのです。適切に離乳を進めることで初めて身に付けることができる能力です。

万が一離乳の進め方が適切に行われていなければ、あまり噛むことができず、食べ物を丸飲みにしてしまうなど食べる能力が発達しない恐れがあります。

周りのお子さまよりも成長が遅くて心配で焦り、咀嚼能力をなるべく早く身に付けようと硬いものを与えてしまうと、硬いものをなんとかして食べようとする丸飲みが習慣になってしまい、正しい発達を妨げてしまうことに繋がります。咀嚼機能を正しく発達させるためにも、お子さまの状態に合わせて必要なステップを踏むことが大切です。

一度丸飲みを覚えてしまうと、咀嚼をしてから飲み込むということを覚えさせるのが難しくなるので十分注意しましょう。

咀嚼の練習開始時期の目安

基本的には乳歯列が完成する2~3歳頃に本格的な咀嚼の練習に入りますが、噛む力はまだ発達しきっておらず、硬めの食べ物は咀嚼できないお子さまも多くいます。乳歯列が生え揃うまでの期間は、左右に1対ずつの乳臼歯しかないため、しっかりと噛むことができないのです。

歯を使う本格的な咀嚼をお子さまに経験させるのは、早くても奥歯が生え揃う1歳半頃です。歯の成長状態を確認しながら、食感や噛み方、飲み込み方や硬さを実感させます。

特に第2臼歯が生え揃うと咀嚼機能は歯ぐき食べの頃に比べて著しく向上します。すり潰しができるようになるとさまざまな食品を食べることができるようになります。食品の大きさや硬さなどを工夫し、歯の成長具合や咀嚼の様子を見て調整しましょう。正しい食べ方を身に付けるためにはさまざまな種類の食品を体験させることが大切です。

ご家庭や幼稚園などで食事の際のマナーを学習したり、みんなと楽しく食事をすることを覚えることは身体的な発達だけでなく精神的な発達をするためにも非常に重要です。

誤った離乳が好き嫌いを作る?

歯が生えてきたことを確認し、成長段階を見ながら食事を与えることで徐々に食べられるようになるものが増えていきます。しかし歯が生えてきたからといって安心してはいけません。

お子さまがなかなか食べてくれないものは、ただ単にその食品の味が嫌いというだけではないかも知れません。味そのものが嫌いなのではなく、そのお子さまにとっては硬すぎて噛み砕くことが出来ないから嫌いで食べられないのかも知れません。

上手く咀嚼して飲み込むことができないという苦手意識が”嫌いな食べ物”を作ってしまうこともあるのです。

お子さまが自分自身が食べるものを認識するためにも、食べるペースを尊重し、食べられない食材があれば歯の状態などを確認してみましょう。

バランスの摂れた食事をするためにも、好き嫌いは無いに越したことはありません。偏った食生活にならないようにするためにも、好き嫌いの原因となるようなことは未然に防いであげましょう。

現代の軟食化が子どもの健やかな成長を妨げる

「しっかりと咀嚼して食べ物を食べる」ことが身に付かなければさまざまな悪影響が出てきます。

子どもの頃から沢山咀嚼することは顎の骨が発達し、消化を助けるだけでなく不正咬合や顎関節症を未然に防ぐことに繋がります。逆に言えば、しっかりと咀嚼することができなければ唾液の分泌が少なく虫歯になりやすい状態になったり、顎の骨が成長できずに歯並びが悪くなったり、脳へ刺激が伝わらずに判断力がにぶるなどさまざまな悪影響が出てきます。

 

カレーやハンバーグ、スパゲッティなどはお子さまが大好きなメニューですが、あまり噛まずに飲み込むことができてしまうため、「1口30回噛んで食べる」ことができるようにしっかりと指導しましょう。軟らかい食べ物ばかり食べていると、咀嚼せずに食べる習慣がついてしまいます。

きちんと噛まずに柔らかいものばかり食べていると、特に上あごの成長が悪くなります。上あごは鼻とつながっているため、鼻の気道(空気の通り道)も狭くなります。空気の通り道が狭いと鼻呼吸が苦しくなり、口呼吸をするようになってしまいます。

口呼吸はお口の中が乾き、虫歯や歯肉炎になりやすく、アレルギーなども引き起こす悪習慣です。また、食事で口が塞がると、呼吸が苦しくなるため、さらに噛まずに飲み込んだり、食が細くなったりもします。さらに、噛まないことで、あごの成長だけでなく、お口の周りの筋肉も発達も悪くなります。筋力がないため噛んでいると疲れてしまい、食事中にお水を飲み、未消化のまま流し込んだりするため、ちゃんと栄養が吸収できないだけでなく、消化管へも負担がかかります。

逆に言えば、あごの成長が重要なこの時期に、きちんと噛む習慣をつけることで、このようなリスクを減らすことができるのです。この時期に身についた習慣で骨格が変わるため、それを成人してから変えるのはとでも難しいのです。

早食いやながら食べなども咀嚼をしっかりできない原因になるので、マナーを身に付けるのと同時に健康のための咀嚼の重要性を伝えましょう。

まとめ

お子さまの健やかな成長を望むなら、適切に咀嚼できるように見守ることが大切です。

虫歯を防ぎ、歯並びを良くすることは健康な永久歯の発達にも非常に大きく影響しますので、お子さまの歯の成長段階に合わせ、咀嚼ができるように練習しましょう。

 

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