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口が開かない状態になる原因は?考えられる疾患とは

私たちが会話をしたり、食事をしたり、あくびをしたり、笑ったりするためには口を開ける必要があります。口を開けることができなければ日常生活に大きな支障がでてしまうことは容易に想像できますよね。

口が開きにくくなる症状が現れることで有名な顎関節症は、多くの方に起こる可能性があり、安静にしていれば治癒するものから専門的な治療や指導を受けなければ改善しないものまでさまざまです。実はこの顎関節症以外にも口が開かなくなる症状が現れる疾患があるということをご存知でしょうか。

顎関節症と思っていても、実は違う疾患が原因で口が開かなくなってしまっている可能性もゼロではないため、この機会に口が開きにくくなる原因として考えられる疾患について詳しく確認しておきましょう。

口が開きにくくなる原因

口が開きにくくなる原因として考えられるのは顎関節症や外傷などです。

顎関節症は歯ぎしりや食いしばりなどの影響で顎関節に負担が掛かることや、顎の関節が変形してしまうこと、精神的ストレスなどが原因で起こります。また、交通事故やスポーツ中の事故、日常生活での転倒などの外傷による開口障害も意外と多く起こっています。外傷による損傷が無事に治癒したとしても、元の状態ではなく変形して顎関節が固まることで口が上手く開かないこともあります。

正常な状態であれば指を縦に3本入れることができるため、もし3本入らないという状態であれば何らのトラブルが生じている可能性があります。原因が思い当たらない場合には放置せず、痛みがひどくなって悪化する前に口腔外科や歯科を受診しましょう。

顎関節症・外傷以外の原因

口が開かなくなる原因は顎関節症や外傷だけでなく、さまざまな疾患が関係しています。顎関節症や外傷以外の原因を確認しましょう。

破傷風

破傷風とは、主に擦り傷などの傷口から破傷風菌に感染し、体内で増殖することで発症する病気です。破傷風菌による毒素のひとつである神経毒素によって強直性痙攣を引き起こします。この毒素はさまざまな神経に作用し、口が開きにくくなる、顎が疲れるなどの症状が現れ、歩行障害、排尿・排便障害などが起こります。重篤な状態では全身の筋肉が硬直して体を大きく反り返らせたり、呼吸筋が麻痺して呼吸ができなくなったりして死亡することがあります。

破傷風に罹患した場合には死亡率が非常に高い恐ろしい病気ですが、幼少期にワクチンを受けているため、罹患する可能性はとても低くなっています。ただし、近年では幼少期に受けたワクチンの効果が無くなる30歳~40歳以上の方を中心に発症例が報告されています。

破傷風菌は熱や乾燥に対して抵抗力が高い芽胞の形で世界中の土壌中に分布しているため、土をよく触る人やアウトドアで傷を作ることが多い人が感染していることが多いと言われています。

パーキンソン病

パーキンソン病とは、大脳の下にある中脳の黒質という場所にある神経伝達物質のドパミンが減少することで起こる病気です。ドパミン神経が減少すると運動障害が起こり、体を動かしにくくなったり震えが起こりやすくなったりします。

ドパミン神経が減少する理由は解明されていませんが、ドパミン神経の細胞の内部にタンパク質であるαシヌクレインが蓄積することが関係しているのではないかと言われています。

日本には約15万人のパーキンソン病患者さんがいるといわれています。若い人でも発症するケースもありますが、50歳~60歳で発症することが多く、高齢になるほど発症する確率が高くなる病気です。パーキンソン病を発症することがきっかけで介護が必要になるケースも多くあります。

パーキンソン病の初期症状として口が開きにくくなることがあります。このほかにも手足が震える、動作が遅くなるなどの自覚症状がある場合には、パーキンソン病の可能性があります。

また、パーキンソン病によってうつ病などの精神症状や、睡眠障害や認知機能障害が起こるなど重篤な症状に繋がる可能性があるため、パーキンソン病の症状が現れたら速やかに医療機関で検査を受けましょう。

関節リウマチ

関節リウマチとは、細菌やウイルスなどの外敵から体を守っている免疫機能に異常が起こることにより、主に手足の関節に炎症が起き、腫れたり痛みを感じたりする病気です。本来、免疫は外部から細菌やウイルスなどを攻撃して破壊することで体を守っていますが、誤って必要な細胞や組織を攻撃してしまうことで関節に炎症を起こします。炎症をそのまま放置すると軟骨や骨が破壊され、関節が変形してしまうこともあります。

他の関節の病気とは異なり、関節リウマチでは関節を動かさなくても痛みを感じるという大きな特徴があり、左右の手足同時に症状が生じやすいことも特徴です。

関節リウマチは30~50歳代に多く発症しますが、男性よりも女性の方が多く発症しています。

全身の複数の関節に炎症が起こる可能性があり、顎関節にリウマチが発症することで開口運動時に強い痛みを伴います。また、下顎骨が変形することで音がしたり、咬合が変化したりシェーグレン症候群を併発することもあります。

まとめ

顎関節症は自然治癒することもありますが、外傷による開口障害は早急に治療しないとその後も症状が継続してしまう可能性があります。

今回ご紹介したように口が開かないということが必ずしも顎関節症や外傷によるものとは限らないため、「いずれ治るだろう」と放置するのは危険です。万が一破傷風やパーキンソン病、関節リウマチの初期症状である場合には早期発見が非常に重要となります。

口が開かなくなってしまえば日常生活に大きな支障が出ます。話すことができない、食事がとれないなど重症化してしまう前に、適切な治療を受けるようにしましょう。顎関節症が原因であれば歯科や口腔外科を、外傷が原因であれば外科・整形外科を受診しましょう。また、破傷風やパーキンソン病、リウマチなどの病気が疑われる場合には内科を受診するなど、考えられる原因に合わせて診療科を選びましょう。

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